【横浜 野球部】「宿命」 #横浜高校

2020年春、村田浩明新監督就任

伝統再興で横浜旋風、再び

甲子園春夏通算34回出場、全国制覇5回の名門・横浜が、新たな一歩を踏み出した。

今春、OBの村田浩明新監督が就任。

松坂大輔、筒香嘉智らレジェンドを輩出し高校野球界に数々の歴史を刻んできたチームは、原点に立ち戻り、伝統再興を目指す。

2020年9月号掲載

■OB指揮官、電撃就任

これは宿命なのか。4月1日、横浜の新指揮官に、村田浩明監督が就任することが発表された。

横浜出身。捕手として2003年選抜準優勝、2004年夏甲子園ベスト8進出に貢献した。

名将・渡辺元智元監督の教えを仰ぎ、成瀬善久(元ロッテ他)、涌井秀章(楽天)の球を受けた。

「自分は、横浜高校に育ててもらった」(村田監督)。

大学卒業後は、神奈川県教員となり、2013年秋から白山を指揮、ゼロからチームを強化し2018年北神奈川大会ではベスト8へ進出するなどその手腕は、周囲が認めるところだった。

そしてOB指揮官に白羽の矢が立った。

村田監督の決断は、母校への恩義にほかならない。

■昨年秋季大会後から「監督空席」

横浜は、方向転換を迫られていた。

結果が出ていないわけでは決してなかった。

2016~2018年は3年連続夏甲子園出場、2019年春は選抜にも選出された。

近年では、藤平尚真(楽天)、増田珠(ソフトバンク)、万波中正(日本ハム)、及川雅貴(阪神)らプロ選手も誕生。

しかしながら、2019年夏の神奈川大会は、準々決勝で県立相模原に、同秋は準決勝で桐光学園に屈していた。

秋大会後、前監督が部内の問題によって解任となり、高山大輝コーチが監督代行を務めていた。

チームは、監督空席のまま、約半年間が経過していた。

3月にはコロナ感染拡大によって練習が休止となった。

■コロナ禍での新体制スタート

村田新監督は4月にやってきた。

若き指揮官は「主役は選手。勇気を持って、横浜高校の門を叩いてくれた選手たちの力になりたい」とグラウンドに出た。

4月からの1週間は、練習ができていたため、指揮官は、選手寮に3~4日間泊まり込み、選手たちとコミュニケーションを図った。

津田啓史主将(3年=内野手)は「不安はありましたが、村田先生が僕たち一人ひとりをしっかりと見てくれて、コミュニケーションを取ってくれました。それによってチームが変わっていきました」と振り返る。

順調な始動となったが、4月7日の緊急事態宣言が発令されたことで、練習は再び中止となり選手寮も閉鎖となった。

そして5月20日、甲子園大会の中止が決まった。

村田監督は、代替大会を3年生のみのメンバーで戦うことを決断し、選手に伝えた。

■サプライズ誕生会

7月17日は、村田監督の誕生日だった。

本格的な練習再開から約1カ月が経過していたが、中断期間が長かったため指揮官と3年生の間には、微妙な“距離”があったという。

津田主将、折笠仁樹マネージャー(3年)は、サプライズの誕生会を計画。

室内練習場でのミーティングのあとに、「ハッピーバースデー」を歌い、監督を胴上げした。

折笠マネージャーは「誕生会によって、監督と選手たちが一つになれた気がします」と笑顔をみせる。

村田監督は「今年の3年生は、一番大変な思いをしてきた。最後は、良い思い出で締めくくれるように、力を尽くしたい」と、3年生に寄り添う。

新指揮官のもと迎える「特別な夏」。

甲子園大会は消えたが、選手たちは自身のプライド、そして横浜の伝統を懸けて白球を追う。

津田主将は「今年の3年生は、どんなに苦しいことも、みんなで力を合わせて、乗り越えてきました。村田先生のためにも最後はしっかりと勝って、後輩たちにバトンをつなぎたい」と視線を上げる。

横浜の新たな歴史が幕を開ける。

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