1998年創部の急先鋒、頂点へあと1勝
佐野心監督、中村紀洋外部コーチ体制
浜松開誠館が創部初の準優勝を収めた。
エース・長屋竣大を軸に進撃をみせたチームは、甲子園という目標が消えたあともワンチームで戦い抜いた。
2020年9月号掲載
(取材・栗山司/撮影・山下大輔)
■創部初の決勝進出へ
浜松開誠館は1998年に創部。
2017年からチームの指揮をとる佐野心監督は元中日の外野手で、常葉菊川の監督として2008年に甲子園準優勝に導いた実績を持つ。
浜松開誠館の監督就任と同時に中村紀洋氏(元近鉄他)をコーチに招聘。
チームは中村氏直伝の豪快なスイングを持ち味に、近年メキメキと力をつけてきた。
今夏、その打撃力以上に際立ったのがエース・長屋竣大(3年)の快投だった。
体のバネを生かしたフォームから140キロ台の快速球を投げ込み、初戦から安定感のある投球を見せた。
4回戦の掛川東戦では2回から登板して粘り強い投球で追加点を許さず。
3対2で競り勝ち、創部初のベスト8入りに貢献した。
■決勝は異例のダブルヘッダー
歴史を塗り替えた浜松開誠館の快進撃は続く。
準々決勝は島田商相手に6対0で勝利。
4回に長屋、伊藤孝紘(3年)、衣笠竜弥(3年)の3連打などで4点を奪うと、投げては長屋がチェンジアップを効果的に使い、6回途中まで無失点に抑えた。
そして、ダブルヘッダーとなった最終日。
まず、準決勝は先発の堀田優介(3年)が好投すると、延長9回のタイブレークに一挙10点を奪って決勝進出を決めた。
試合が終わると、選手たちは清水庵原球場から草薙球場に移動。
食事はバスの車内で済ませ、大一番に向かった。
決勝戦は序盤に投手陣が4失点するも、ジワリジワリと追い詰める。
7回裏には2番・伊藤の犠飛で1点差まで詰めた。
しかし、最後はあと一歩及ばす。
それでも5回からマウンドに上がった長屋は「ベストな状態ではなかったが、今出せる力は全部出せた」と満足な顔を伺わせた。
■3年36人がベンチ入りを経験
メンバーは県外選手が大部分を占める。
今年の3年生は36人。
大会を通して全員がベンチ入りを経験した。
決勝戦の後、大所帯をまとめた主将の西川侑希(3年)が安堵の表情を見せた。
甲子園が中止となり、一時は選手がバラバラになりかけたが、西川は「高校生活は1回しかない。最後までやり切ろう」と何度も訴え続けたという。
その言葉が響き、大会で勝ち進むにつれてワンチームになった。
佐野監督も「ダブルヘッダーは肉体的にも精神的にも辛かったと思うが、最後まで諦めずにやってくれた。100点でしょう」と準優勝に輝いた選手たちを労った。
新興勢力として、新たな一歩を踏み出した。