今夏東東京ベスト4進出
大会後に和泉隆前監督が勇退し新体制へ
今夏東東京ベスト4の大森学園は、大会後に和泉隆前監督が勇退(部長就任)し石黒隼新監督(前コーチ)が就任した。
夏進撃の余韻が残る中で、新チームは力強くスタートを切った。
2020年10月号掲載
■俺たちの長い夏
和泉隆前監督の勇退は、1年前から決まっていた。
和泉前監督は「安心して、石黒コーチ(新監督)に預けられる状態だったので、夏が終わったら任せようと思っていました」と打ち明ける。
昨秋大会は2回戦で創価に2対6で敗れたが手応えがあった。
チームは春・夏で結果を残すべく、猛練習に励んだが、コロナ禍によって春大会は中止となり、夏の見通しも立たなくなった。
前指揮官は、「最後の夏」なき勇退も覚悟していたという。
不安の中で、夏大会の開催が決まった。
大会前、和泉前監督は3年生たちに「俺が監督をするのは、お前たちが最後だ」と伝えた。
石黒コーチは「二〇二〇夏 逆境に負けない 俺たちの長い夏」とデザインされた独自Tシャツを制作し全員に配布、一丸となって「最後の夏」へ向かった。
和泉監督を東京No.1にする。
大森学園の夏は、こうして始まった。
■準々決勝で二松学舎大附を撃破
進撃をみせたチームは、準々決勝で優勝候補・二松学舎大附と対戦した。
下馬評は、二松学舎大附有利。
しかし、選手たちは一歩も引かない戦いを演じると、7回表までに6対1とリード。
しかし7回裏に反撃を受け4点を失うと、6対5となる。
大森学園は、エース工藤翔午(3年)から松本哲郎(2年=捕手兼投手)へスイッチ、先輩たちの想いを背負ってマウンドに立った松本が、二松学舎大附打線を封じて逃げ切りに成功した。
二松学舎大附に追い上げられながらも、耐え抜けたのは実力の証。
ゲームセットの瞬間、石黒コーチ、選手たちは歓喜の男泣き。大森学園の夏は、まだ終わらない。
終わらせるわけにはいかない。
チームは準決勝・関東一戦で敗れることになったが、悔いなき敗戦だった。
和泉前監督は「私自身初のベスト4。選手たちから、甲子園以上の感動をもらいました」とユニフォームを脱いだ。
■託されたバトン
夏大会後、石黒新監督が誕生した。
東海大菅生の4番を張ったスラッガーで2006年選抜に出場、父親が大森学園出身だった縁で2012年からコーチとなり、2020年秋に和泉前監督からバトンを授かることになった。
石黒新監督は、前チームからの主力だった松本を主将、半田夢叶(2年=内野手)、矢吹北斗(2年=内野手)を副将に任命し、新たなチームづくりに乗り出した。
投手は、松本主将と八田成(2年)を軸に整備を進めている。
石黒新監督は、学生時代は強打者だったが、目指すのは、走攻守にバランスの取れたチーム。
いまは走・守に重点を置いて指導を進める。
石黒新監督は「野球は打撃だけでは勝てません。打撃を生かすためには、走塁・守備が必要。細部を追求した上で、迫力のある野球をみせたいと思います」と話す。
新体制となったが、大森学園の魂は継承される。
東京No.1への旅は続いていく。