監督&部長の二人三脚
甲子園を目指して成長を続ける
2018年秋にベスト8入りした光明相模原。3年生が抜けて少数精鋭となった中、チームは「挑戦」から「躍動」へと進化を遂げようとしている。(取材・三和直樹)
■敗戦の中の手応え
土煙が舞う。練習開始の合図とともに勢いよく駆け出した。相模川沿いにある専用グラウンド。冬の到来を目前にし、ナインたちの声は熱を帯びていた。
「これまでは比較的、人数が多いチームだったんですけど、今年は久々に2学年で30人に届かない(2年生10人、1年生16人)。引退した3年生は45人いましたから。だから人数的にも力的にも、今までの中で一番少ないかも知れない。でもそれを彼ら自身が一番良く分かっている。だからこそ、練習中から必死になって取り組んでいる」。同校OBで、コーチから監督となって10年目を迎えた芝崎広之監督は、選手たちの積極的な姿勢に「練習の質が上がった」と目を細めながら頼もしげに語る。
秋は1回戦で敗れた。地区予選を16対0、12対0と圧勝して本大会に出場したが、1回戦で同大会準決勝まで勝ち上がった桐蔭学園と対戦。中盤以降に失点を重ねて0対8で8回コールド。しかし、3回までは先発の中島稔(2年)が相手打線をパーフェクトに抑え、失点はミス絡み。「チャンスはあると感じました。負けて何言ってんだと思われるでしょうけど、僕の中では手応えの方が大きかった」と芝崎監督。練習試合でも甲子園常連の強豪校を相手に互角の戦いを演じ、金子功児主将(2年=内野手)も「桐蔭も敵わない相手ではないと確信しました」と力強く言い切った。
■恵まれた練習環境と全国制覇の部長
強みは多くある。練習場所は、学校からひと駅の場所にある専用球場。室内練習場にサブグラウンド、ブルペン、ウエイトルームを備え、同時にマシン4台での打撃練習が可能。LED照明も完備されており、「環境は抜群です。周りに家もないので、騒音や砂埃を心配することもない。やろうと思えば何時まででも練習できる」。高速道路のインターチェンジからも近く、「強豪校も含めてよく遠征に来てくれる」と感謝する。
さらに選手の成長を後押しするのが、技術指導全般を担う松﨑元部長の存在。芝崎監督と同い年で、「子どもの頃、近所でよく一緒に遊んでいた」という幼馴染みだが、東海大相模の門馬敬治監督の参謀役として全国制覇も経験し、多くのプロ選手を指導してきた育成のスペシャリスト。2016年から同校の部長となり、「仕事の役割分担ができるようになって、いろんな部分でうまく回り出した」と芝崎監督。二人三脚の指導体制で、甲子園を目指したチーム作りを進めている。
■新たなテーマとともに
そして今秋、これまで定めていた『挑戦』というテーマを『躍動』に変えた。「“挑戦”というところから、さらに一歩進みたい。自分たちから動いて積極的に仕掛けられるチーム、グラウンドで常に“躍動”できるチームを目指す。個々の力は高くなくても、一人一人が躍動して、その力を結集させて、どこが相手でもいい戦いができるようにしたい」と芝崎監督。
現チームは、「3番・ショート」で走攻守三拍子揃った金子主将を中心に、1番には吉田柊平(2年)がヒットメーカーとして、4番には強肩強打の大型捕手・町田隼乙(2年)が座る。1年生にも、中学時代に軟式野球で全国大会に出場した大野北中のエース・野村昇吾と主軸の小林璃生という楽しみな存在がいる。彼らが“躍動”すれば、神奈川球界に旋風を巻き起こすことは可能だ。
まずはベスト8の壁を破る。そして夢の甲子園へ。照明に照らされた白い息が、歓喜の叫びとなる日は、必ずやって来る。
[2021年1月号掲載]