元祖都立の星
1978年、1985年に西東京大会で準優勝
1978年、1985年に西東京大会で準優勝となった元祖都立の星・東大和。最後の決勝から35年が経過したが情熱は今でも変わらない。野球が心底好きな選手たちが、虎視眈々と上位進出をうかがっている。
[2021年1月号掲載]
■純粋に野球が好きな選手たち
選手たちは、目を輝かせて校庭へ飛び出してくる。昼休みもグラウンドでキャッチボールや素振りなどをしているという。2010〜11年から指揮を執り就任9年目の福島靖監督は「放っておけば、いつまででもグラウンドに残っている。純粋に野球が好きな子たちが集まってきているんです」と目を細める。「ただし」と言葉を続ける。「ギラギラ感がもっとあっていいと思うんです。限界までやり抜くことができれば、もっと強くなれるはずなんです」。
片倉で10年を過ごすなど指導歴約20年の福島監督は、令和時代を戦う選手たちに寄り添いながら、力を引き出している。
■甲子園の心を求めて
東大和は、都立名将・故佐藤道輔監督が指導していた1978年、1985年に西東京大会で準優勝となった。「高校野球は人間教育である」「日々の練習が勝利につながる」という確固たる信念のもとトーナメントを駆け上がった。選手たちには、甲子園よりも大切なことがあると伝えていた。佐藤監督は著書「甲子園の心を求めて」という本で自身の考えを記している。それらは、現在の高校野球指導の原点となっている。
現在、「都立の星」の称号は、2013年に西東京準優勝となった日野に譲っているが、東大和が「元祖」。高校野球の古参ファンは、そのことを十分に知っているが今の1、2年たちは、2003、2004年生まれ。福島監督は「時代が移り変わっている中で、あの時代を知らない生徒たちに無理に伝えても意味がない。選手たち自らが知りたい、学びたいと思ったときのために、当時の様子が書かれた書籍を揃えている」と話す。福島監督自身もそれらの本から学んでいるという。
■秋季大会は日大鶴ケ丘に惜敗
東大和は2016年夏4回戦、2018年春ベスト16など都立の意地をみせている。
二松学舎大附、東海大菅生、日大三、帝京など強豪に敗れる大会も多く、結果以上の力を維持しているとも言える。2020年の秋季大会では、予選で駿台学園、武蔵丘を下して都大会へ駒を進めると、初戦で日大鶴ケ丘と対戦。日大鶴ケ丘優位の下馬評の状況下、エース川島慶土(2年)が堂々たるピッチングをみせて8回まで0対0のゲームを演じた。9回裏に耐え切れず0対1のサヨナラ負けとなったが、大きな存在感を示した。
福島監督は「日大鶴ケ丘に対して、あそこまで戦えたのだから、もっと欲張っていい。相手にかみついていくくらいの気持ちが見せられれば、この子たちはもっと上まで行ける。応援してくれる学校、地域のためにも、もう一度、神宮球場の決勝戦まで行って優勝したい。そうすればまた『都立の星』って言ってもらえる」と頬を緩める。元祖都立の星は、輝く瞬間を待っている。
2年生