新指導体制2年目で進化着々
名門復活へ「全員野球」
春夏通算13度の甲子園出場を誇る名門・前橋工。復活を掲げるチームは、新指導体制2年目で着々と進化している。
■伝統校に吹く新たな風
チームは今、変革期を迎えている。これまでは前橋近隣を中心とした中毛地域の選手たちが集まっていたが、今春には太田・城西中から佐野伊吹(1年=内野手)が前橋工の門を叩いた。東武線とJRを乗り継げば十分に通学範囲という。佐野はこの秋から1番・ショートで試合に出場し、伝統校で経験値を積んでいる。佐野は「グラウンド面など施設が整っていて、自分が成長できる環境だと思いました」と入学の経緯を話す。
新チームの部員数は、2年生9人、1年生16人。甲子園常連だった時期と比較すれば人数は減っているが、野球に対する情熱は決して負けていない。伝統はオートマチックに継承できるものではなく、自分たちで紡いでいくもの。伝統校には新たな風が吹き、学年の枠を越えた競争がチームを活気付けている。
■選手の声が響くグラウンド
高校野球のみならず人材育成においても、情熱あふれる指導者たちが選手たちに寄り添っている。前橋工を指導するのは、 同校OBで前・高崎工指揮官の髙橋寛人監督。さらに参謀には、前・利根実指揮官の久保田圭祐部長がつく。共通のビジョンを描く二人のタッグによって、チームは生まれ変わろうとしている。
今季のスローガンは「進化、深化、真価」。 髙橋監督は「個人が成長することで、チームは強くなる。選手の進化がより深くなることで、チームには新たな価値が生まれていく。大会で真価を発揮するには、毎日の練習が大切だ」と話す。選手たちは、練習をやらされているのではなく、自分たちで主体的に取り組んでいる。選手たちの声が響くグラウンドの心地よいムードが、チームの変化を表現している。
■チーム全員の一体感が武器
この秋、前橋工は一つの真価を示してみせた。最速135キロの本格派右腕エース羽鳥夏樹(2年)、鈴木大和主将(2年=捕手)のバッテリーを軸にしたチームは、1回戦で桐生清桜、2回戦で大泉に勝利し、3回戦へ進出した。3回戦の相手は、結果的に秋を制した桐生第一。1年生左腕・岡部真大が先発し、エース羽鳥へつなぐ戦いとなったが、8回表まで2対5。8回裏に3失点し、最後は2対8のスコアになったが、選手たちは持てる力を発揮して、桐生第一に食らいついていった。エース羽鳥は7回に、ソロ本塁打を放つなど打撃でも非凡な才能をみせた。
鈴木主将は「桐生第一戦は、勝てなかったが優勝レベルを経験することができた。チーム全員の一体感を武器に春、夏の戦いへつなげていく」と2022シーズンを見据える。選手たちは、自分たちの進む方向に手応えを感じながら、冬のトレーニングに励む。前橋工は、からっ風の季節を乗り越えて、さらに強くなる。