2018年に「富岡」と「富岡東」統合
仲間とともに目指す「甲子園」
富岡高は2018年4月に「富岡」と「富岡東」が統合し男女共学校として新たなスタートを切った。チームは伝統の力を土台に未来を紡いでいく。
「2021年1月号掲載]
■最速135キロのエース三浦
「地元・富岡高で甲子園へ行きたい」。
今年の世代は、「悲願の初甲子園」という旗印のもと力のある選手たちが集まってきた。エース三浦吏騎(2年)は、富岡北中時代に県選抜に選ばれていた逸材。富岡北中では野球部員は、たったの1人。富岡西中との連合チームで戦っていた。伸びのあるストレートを投げ込んでいた三浦には、私学強豪などからの誘いがあったというが、地元伝統校・富岡を選んだ。三浦は「小学生のころから一緒にやってきた仲間たちと一緒に甲子園を目指したかった」と、伝統のユニフォームに袖を通した。三浦は1年生の秋からマウンドに立つと、実戦経験を積んでいった。最速135キロの伸びあるストレートと落差のある変化球を武器に、相手打者をねじ伏せている。
三浦は「吉田輝星選手(金足農業―日本ハム)のようにストレートで勝負できるピッチャーになりたい」と進化を誓う。
■地元で受け継がれる甲子園への思い
2021年の夏へ向かうチームは、最強世代の一つだ。
積極性とキャプテンシーをみなぎらせる小菅太愛主将(2年=中堅手)を絶対的な軸として、チームは一丸となっている。富岡は、2014年秋に県ベスト4で「21世紀枠候補」に選出され、選抜甲子園にあと一歩のところまでたどり着いている。
小菅主将は「21世紀枠候補のとき自分は小学生でした。あのニュースを観て、『富岡高で甲子園に行きたい』と考えるようになりました」と、当時を思い起こす。先輩たちが流してきた汗と涙がチームの伝統となり、選手たちに力を与えている。今季のクリーンアップは小菅主将、センスあふれる好打者・小暮健翔(2年=左翼手)、パワーヒッター清水優(2年=一塁手)が固める。高校通算本塁打5本の小暮は「文武両道で甲子園を目指すことに意味があると思います。自分たちの代で甲子園出場を決めたいと思います」とバットを振る。
■地域の代表として戦う選手
伝統校・富岡の野球部創部は1902年(明治35)。2年前、富岡東が統合し新たな船出となったが、その伝統はしっかりと継承されている。スタンド応援では、旧富岡高、富岡東、富岡高の3つの校歌を歌い、地域の代表として戦っていく。
チームを率いるのは、OBの中野光士監督。2014年秋に就任し7年目を迎える。2014年秋はベスト4、2017年秋ベスト8、2018年春ベスト8という結果を残してきたが、決して満足はしていない。「簡単に勝てないからこそ、挑戦する意味があると思っている」(中野監督)。
2020年秋は2回戦で、前橋との伝統校対決を2対1で制してみせたが、3回戦で前橋育英に屈した。小菅主将は「秋季大会は、自分たちのミスで崩れてしまった。守備をもう一度見直して、春・夏に勝てるチームにしていきたい」と前を向く。母校の甲子園出場の夢を追う中野監督は「今年はベンチの20人の力が拮抗していて全員で競争できるチーム。この選手たちには、大きな可能性があると思っている」と、夏に照準を合わせる。
富岡のプライドを背負う選手たちは、伝統を刻みながら、次なる扉を開けていく。