秋予選敗退は成長への糧
“投打融合”での快進撃を目指す
名門は屈しない。2019年秋、2020年夏秋に3季連続ベスト8の実績を持つ日大二だが、今秋はブロック予選初戦敗退という結果になった。選手たちは、敗戦を受け止めて成長と飛躍を誓う。(取材・三和直樹)
■露呈した試合経験の少なさ
まさかの敗退だった。新チームとして初の公式戦。一次予選のブロック1回戦で工学院大附相手に序盤3イニングで5点を失うと、打線は初回に挙げた1点のみで1対6の完敗。「負けるんだったら、こういう形という試合。相手のナイスゲームでした」。チームを指揮して15年以上が経つ田中吉樹監督にとって「記憶にない」という秋の初戦敗退、「僕自身はサッパリしています」と振り返った。 その理由は、敗因が明白だったから。現2年生は入学時からコロナ禍による練習制限が続き、チームとして練習する時間を十分に持てなかった。まずは練習量を増やし、実戦感覚とレギュラーとしての自覚を体に叩き込む必要があった。
■敗退後の意識統一と猛練習
スポーツ推薦未実施の中で強豪であり続けることができる訳は「入学後の成長率」にあり、それを支えていたのは「練習」だった。そして、不足分を埋め、じっくりと鍛錬を積むという意味で、早期敗退を前向きに捉えている。 「去年は秋の大会が終わったのが11月初旬。それが今年は9月5日。2カ月も早く本格的な練習に入れた」と田中監督。同時に選手の中にも強い危機感が生まれ、類稀なリーダーシップを持つ山口瑶介主将(2年=内野手)を中心にミーティングを重ねながらチームの意識を統一。「秋は声が出ずに足も動かなかった」という反省から、ノック前に“全力ラダー”の練習メニューも追加して猛練習に励んだ。 「一人一人に自覚が出てきたと思いますし、ベンチからも常に声を出して、チーム全員で盛り上がれるようになってきた」と山口主将。結束が強まり、徐々に自信も生まれてきた中で、強豪校相手の練習試合にも勝利。田中監督は「チームが出来上がるのが遅かったけど、今の段階では去年のチームよりも期待が持てるところまで来ている」と目を細めている。
■どん底から上り詰める
今チームの特長は「投」にある。小林誠明、大野駿介の2年生左腕の2人が高い能力を持ち、1年生右腕の室井大輝も楽しみな存在。一方、長打力不足の課題を持つ「打」も、同校伝統の肉体強化メニューとロング置きティーの打ち込みを重ねて日々進化中。遊撃手として守備を引き締める役割も担う主将の山口、鋭いスイングが魅力で中軸に座る片倉裕文と、前チームからのレギュラーだった2人を中心に“繋ぎの打線”を構築中だ。
田中監督は「前の代まではバッティング重視のチーム作りをしてきましたけど、今年はピッチャーが中心。春にステップアップして夏に勝つ。それがうちのリズムですし、本来の姿。どん底からスタートして、どこまで上り詰められるか」と語る。自分たちのチームづくりの“原点”に戻った日大二。秋の早期敗退を成長への糧とし、例年以上の「投」と進化中の「打」を融合させ、来夏に快進撃を披露する。