山奥のグラウンドに最新機器
SNS情報発信&データ計測で選手急成長
全国有数の激戦区・神奈川で頻繁に8強進出を果たしている新興勢力・立花学園。山奥の専用グラウンドに最新機器を整備し、ICT(インフォメーション&コミュニケーションテクノロジー)野球で虎視眈々と頂点を狙う。
(2021年2月号掲載)
■数値化で選手のやる気を刺激
立花学園の練習グラウンド(足柄上郡大井町)は、学校校舎(足柄上郡松田町)から車で約20分の場所にある。県道から車一台が通れるほどの幅の山道を登っていくと、野球場と選手寮が見えてくる。ここが立花学園の「練習基地」だ。
12月の取材日には紅白戦が行われていたが、グラウンド、スタンドのあちこちに普通の野球部とは違う光景が散見された。バックネット裏スタンドには動画撮影のビデオが設置されていた。そのシーンはどの高校でも一般的だが、ビデオの前では選手たちが試合実況と解説をしていた。その音声は映像に乗せて保護者らにyoutube公開(限定)されていた。さらにスタンドにはスピードガンが置かれ、控え選手たちがストップウォッチを片手にベース間走塁計測をしている。
グラウンドに目を移せば、マウンドとホーム間に球速・球質測定器「ラプソード」が設置されている。練習内容によってはドローンを飛ばして動きを上空から確認する日もあるという。志賀正啓監督は「機材を用意すれば今の選手たちは自分たちで使って、どんどん覚えていきます。数値を示すことで選手たちはやる気になっていくのです」と見守る。
■150キロプロジェクト
スタンドでは、吉田大育コーチがスマホ片手に動画を簡易編集しツイッター(立花学園野球部公式アカウント)で発信していた。立花学園では野球部の情報発信のために、志賀監督、吉田コーチがツイート。練習の様子や野球部のイベントなどを公開している。マネージャーブログは、コーチの検閲後に公開する仕組みになっている。
吉田コーチは「ここは横浜からも離れていますし、練習場が山奥なのでなかなか観てもらえる機会がありません。私たち指導者がSNSで発信することで全国の方々から『いいね』を押してもらえるので、『いいね』の数が選手たちの励みになっています。SNSを開始してから約2年が経過していますが、選手やチームに明るい変化が見られています」と効果を説く。
12月11日のツイートは「(投手の)永島田がまたMAXを更新しました。147キロ!150キロまであと3キロ!#150キロプロジェクト」。豪腕・永島田輝斗(2年)が自身の記録を更新したことを伝えた。ダブルエースの小林爾(2年)のストレートも140キロを超え、両右腕は春・夏大会に照準を合わせる。
■野球部としての伝統固辞
立花学園のチーム改革は、2017年に志賀監督が就任したときから始まった。指揮官をサポートするのは、OBの吉田コーチ。若き指導者コンビによって、“常識破り”な作戦が次々に実行されている。それを許可する学園の器の大きさも見逃せない。
チームは最近4年間で4度のベスト8入り。敗れた相手は、神奈川トップ格の強豪ばかりだ。ICTを駆使する野球部だが、その一方で挨拶・礼儀などの規律も徹底。新しきを取り入れる一方で、野球部としての伝統も守っている。立花学園の横断幕は「I’m so exited!! ワクワクしてる??」と問いかける。
志賀監督は「これまでとは違った方法で甲子園にたどり着くことに意味がある。データやSNSは勝つためのツール。高校野球に革命を起こしたいです」と話す。立花学園のSNSが「甲子園初出場!」を報告する日は遠くないかもしれない。