武相「志生夢叶」
「全力疾走 全力発声」から始める改革
1960年代に4度の甲子園出場を果たした伝統校・武相。復活を期すチームは、昨夏からOBで元富士大指揮官の豊田圭史新監督が率いている。復活の鐘が高らかに鳴り響こうとしている。
■OB指揮官によるチーム再建
復活の予感が漂っている。
勇ましい戦いで1960年代の神奈川を席巻した武相。当時の戦いぶりは、神奈川のみならず全国高校野球界の伝説になっている。2010年までは県大会でペスト8、ベスト4にたびたび進出したが、近年は2010年夏、2011年秋にベスト4へ進出いて以来、4強からは遠ざかる。最近5年の最高は4回戦で、過去の栄光を知るOBたちに寂しい思いをさせている。そんなチームが大きな変革期を迎えた。昨年(2020年)8月、前任の西原忠善前監督の退任に伴い、武相OBの豊田新監督が就任したのだ。武相卒業後、富士大に進学し、社会人野球フェズント岩手でプレー。2009年より富士大コーチに就任、2013年12月から同大監督になり北東北大学リーグ10季連続優勝を果たす一方で、山川穂高(西武)、外崎修汰(西武)ら個性あふれる選手を育ててプロへ送り出している。
学校サイドの意向と豊田監督の意思が合致し、OB指揮官によるチーム再建がスタートした。
■志を持てば夢は叶う
練習グラウンドに掲げられているスローガンは「全力疾走 全力発声」。
ダイヤモンドには、部員たちの心地よい声が響き、練習は活気にあふれている。ネット裏にはヘルメットが、乱れなく並び、環境整備も徹底されている。佐藤明登主将(3年=内野手)は「技術が足りなくても、声や全力疾走、整理整頓は自分たち次第。監督の指導に応えるためにも、自分たちが変わらなければいけないと思っています」と練習に向き合う。指揮官の座右の銘は「志生夢叶(しせいむきょう)」。志を持って生きていれば夢は必ず叶う。大学で多くの選手を育ててきた豊田監督は、本気で後輩の指導に情熱を傾ける。指揮官は「まずは学校生活や練習に取り組む姿勢などのプロセスが大切。結果はあとからついてくると思っています。強い武相を取り戻すために、私自身が汗をかいて必死でやらなければいけないと考えています」と語る。
■甲子園の扉を再び
新2・3年生約35人は昨年8月からの約半年間、豊田監督の練習に必死に食らいついてきた。オフシーズンは過酷なトレーニングメニューが待っていたが、一丸となって乗り越えたことで心身ともに大きな成長を遂げた。4月7日の学校入学式後には、約40人の新入部員が加わり、70人を超えるチームとなった。1年生の中には中学時代に実績を残した“原石”も多く、チームには新たな刺激が加わった。 初日のトレーニングでは、2・3年が体力の違いをみせて冬の練習の成果を披露。それもチームの進化と言える。豊田監督は「2・3年生の努力と姿勢が、新生・武相の土台になる。まだ力はないが、大会では周囲から笑われようがガムシャラに戦っていく。そして神奈川の高校野球界の新しい勢力になっていきたい」と力を込める。
武相が、甲子園の扉を再び開けたとき、神奈川の勢力図は塗り替えられる。