【レジェンドインタビュー】秋吉亮

「どんな環境でも自分しだい。 今をやり抜くことがすべて」

 足立新田高から中央学院大、社会人を経てプロ野球への道を切り開いた秋吉亮。都立出身として唯一のWBC出場歴を持つレジェンドが球児にメッセージを送る。

●高校時代にサイドスロー投手へ

―足立新田時代を振り返って?
「練習は、やっぱり厳しかったですね。都立でしたけど、私立に負けないくらいにやっていました。ただ、終わりが夜7時と決まっていたので、その中で強度の高い練習をしていた記憶があります」

―都立を選んだ理由は?
「家から近かったのが理由の一つです(笑)。試合に出て、活躍できればいいな、という程度でした。小さいときからプロ野球選手になりたいと思っていましたが、現実的ではありませんでした。試合に出られなければ評価していただけないので、まずは試合に出られるチームを選びました。3年生の夏にベスト4まで行ったことで次の道が広がっていきました」


―どんな指導だったのでしょうか?

「当時の監督は畠中陽一先生で、今は日野台で指導されていると聞いています。畠中先生自身も大学(早大)までプレーされていましたし、とてもわかりやすい指導でした。あの時間があったから僕は成長することができたと感じています」

―ピッチャーになった経緯は?

「1年の夏までは野手でプレーして、その秋から本格的にピッチャーになりました。畠中先生が、野手でのスローイングを見ていてくれて、最初からサイドスローでブルペンに入りました。振り返ると、そこがターニングポイントでした」

―印象に残っている試合は?

「3年生夏の帝京戦(2006年)です。帝京相手に都立でも戦えることを示したかったのですが、初回から打ち込まれてしまいました。ただ、2回以降はしっかりと戦えていました。2対9で7回コールドでしたが、やりきった感がありました。帝京が優勝したのですが、甲子園のレベルを知ったことでさらに上を目指したいという気持ちが芽生えてきて大学へ進学しました」

●高校時代は早実・斎藤と対戦

―高校時代では早実・斎藤佑樹さんと対戦しています。
「2年の秋に対戦しました。5回くらいまでノーヒットで抑えていて、最終的には1対3で負けてしまいましたが、良い試合ができました。あの試合によって、自分の存在を知ってもらうことができたと思います。その意味では感謝しています」

―斎藤佑樹さんとは日本ハムで一緒にプレーしています。

「日本ハムで3年間一緒にプレーしました。斎藤佑樹さんは、ご自身の考えを持った選手で自分にとっても刺激になりました。同級生で仲良くさせてもらっていて、僕が独立リーグに行ってからも話したりしました。引退後も活躍されているようで、やっぱりすごいなと思います」

―都立でプレーする楽しさは?

「高校野球は私立が全てではないと思いますし、都立(公立)でも頑張れば甲子園にもいけるし、チャンスも広がっていきます。自分は都立で野球をして良かったと思っています」

―都立出身でプロ野球入りを果たしました。

「高校時代を土台にして、大学、社会人で頑張ることができたからプロへ行けたと思っています。都立でベスト4に入ったあと、いくつかの大学から声を掛けてもらって次のチャレンジができました。そこからはプロを意識して努力を続けていきました。高校卒業から先は自分しだいだと感じます。まずは高校3年間をしっかりとやり抜くことが大切だと思います」

―自分しだい、ですね。

「いまは、Youtubeにいろんなトレーニング方法を紹介している動画があって、それによって自分で学ぶことができます。昔よりも球児たちの球速は上がっていますし、若いうちからプロで活躍する選手も増えています。都立、私立という環境ではなく、すべては自分の考え方だと思います。高校で土台をつくって、大学で勝負してもいいですし、いろんな道があって良いと思います」

―いまは自分で学ぶことができますね。

「プロ野球選手や元プロ選手が動画で解説してくれていますし、いろんなトレーナーもトレーニング方法を紹介しています。昔であれば考えられない時代です。その情報をどう活かすかは自分しだいです。都立、私立関係なく、高校生にも大きなチャンスがある時代だと思います」

●社会人、プロは結果を追求

―大学卒業後に社会人パナソニックへ進みました。
「社会人ではプロに行くのが目標だったので、成長ではなく都市対抗で結果を残すことだけを考えていました。社会人はプロへの最後のチャンスです。結果を追求したことで、自分の生活や行動も変わっていきました。2013年秋にヤクルトから指名を受けたときは本当にうれしかったです」

―2017年にWBCに出場しています。

「WBCのメンバーに選んでもらって感謝しています。当時の侍ジャパンのピッチングコーチは権藤博さんだったのですが、その出会いも自分のターニングポイントです。それまではストレートで勝負という気持ちが強かったのですが、『ストレートでカウントを作って、変化球で勝負しろ』というヒントをもらいました。それによって、ピッチングの幅が広がっていきました」

―高校生にメッセージをお願いします。

「コロナ禍で野球の練習自体が大きく変わっています。時間の制限もある中ですが、だからこそ自分自身で練習することが大事になります。家で練習できるメニューはいくつもありますし、(学校での練習時間制限は)決してマイナスではないと思います。1日24時間はみんな同じで平等です。そこには私立、都立も関係ありません。どれだけ本気になれるか。自分自身との戦いに勝つことが大事だと思います。目標に向かって、本気でチャレンジしてほしいと思います」

 

 

秋吉亮(あきよし・りょう)

1989年3月21日東京都生まれ。足立新田高校ー中央学院大ーパナソニックーヤクルトー日本ハムーソフトバンク。2014年にヤクルト入団。2017年WBC日本代表選出。プロで9年間活躍し、2023年はベイサイドリーグ・千葉で選手兼コーチ。

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