春夏秋通じ初の県制覇
秋惜敗の雪辱果たす
令和5年度の春季静岡県大会は、加藤学園の初優勝で幕を閉じた。チームは夏の聖地へ向け、着実に成長を遂げている。(取材・栗山司)
■接戦に強いチームへ
1996年の創部以来、春夏秋を通じて初の県制覇。9回裏、最後の打者を打ち取った小澤亨彦と片山晴貴の2年生バッテリーは抱き合い、マウンド上でナインの笑顔がはじけた。 昨秋は東海大会に出場するも、準決勝で常葉大菊川に敗戦(0対2)。あと一歩で選抜大会出場を逃した。
春のテーマはいかに接戦の試合をものにするのか。秋の悔しさを忘れることなく、米山学監督は「常にそこを意識して練習してきた」と話す。 準決勝は浜松開誠館と対戦。2点リードの9回裏に1点差まで詰め寄られたが、最後は逃げ切った。
日大三島との決勝戦も緊迫したゲームを制した。初回に3番・藤澤光輝(3年=内野手)のタイムリーで先制すると、先発の吉川慧(3年)が抜群の立ち上がりを見せる。「ストレートにキレがあり、今シーズン一番良かった」と米山監督。5回まで被安打1の無失点に抑えた。 すると打線も援護。6回に5番・北條創太(3年=外野手)のタイムリーで貴重な2点目を挙げた。
その後、7回に1点を失ったところで小澤がマウンドへ。準決勝でも好投した右腕は「ピンチでも楽しんでリラックスして投げようと思った」と臆することなく腕を振って投げ込んだ。9回は無死から出塁を許すも、続く打者の送りバントを味方の守備陣が阻止。最後の打者はセンターフライに抑えた。小澤は「準決勝で抑えることができて自信になりました。夏までにもっとチームを助けられるピッチャーになりたい」と語る。
■全員で原点に立ち返る
冬の期間は「当たり前のことを当たり前にできるようになろう」と、あらためてチームとして決まり事を徹底した。挨拶、ゴミ拾い、一塁への駆け抜けなど、全員で原点に立ち返った。 そんなチームをまとめた主将・太田侑希(3年=外野手)が2月末に左肋骨を疲労骨折。「侑希が戻ってくるまで勝ち抜こう」とチームが一丸となった。太田は県大会の準々決勝で代打として復帰。決勝戦は志願して先発出場した。9回の第4打席では持ち味のシャープなスイングでセンターオーバーの二塁打。塁上でガッツポーズを作ってチームを鼓舞した。 それでも、試合後の主将に笑顔はなかった。「歴史を変えることができましたが、ここで満足はできないです。切り替えて次に向かっていきます」。
■チャレンジャー精神で立ち向かう
米山監督は「誰かに頼るチームではなく、切磋琢磨できた大会となった」と春の収穫を挙げた。小澤、藤澤、石田獅子(3年=外野手)ら、新たな選手が台頭し、全体的な底上げとなった。一方で「ここがゴールではない」と気を引き締めることも忘れなかった。 昨秋の負けを無駄にすることなく、粘り強さを手に入れた加藤学園。夏もチャレンジャー精神で頂点を目指す。