1999年に城東を甲子園へ導いた指揮官が指導
急激に進化するチーム、夏飛躍の予感  

 

2006年の東東京大会でベスト4となった実績を持つ下町の雄・足立新田。秋、春大会を経て成長を遂げた今年のチームは夏飛躍を誓って練習に励んでいる。

■地道な鍛錬が選手を成長させる  

東東京大会を盛り上げてきた都立高だ。2006年の東東京大会では、元ヤクルト・日本ハム・ソフトバンクの秋吉亮を擁して準決勝へ進出した。その後も2008、2010年夏にベスト8へ進出するなど力強い戦いをみせてきた。近年は私学すう勢の時代となっている中でも地道な鍛錬を続けて、昨夏には2回戦で成立学園を撃破。3回戦で都立実力校・小山台と接戦を演じて2対3で敗れたが持てる力は発揮した。中学時代に実績を残した選手は少ないが、野球が好きな選手たちは2年半という時間を通じて、着実に成長。強豪に食らいつく戦いによって、チームの価値を維持している。夏が近づく今、チームにはさらなる活気が生まれている。

■甲子園は不可能ではない  

選手たちに情熱を注ぎ込むのは、有馬信夫監督だ。1999年に城東を指揮。東東京では都立初の甲子園出場を決め、深紅の優勝旗をJR亀戸駅へ持ち帰ったのだった。その後は、保谷、総合工科で指導し2018年4月から足立新田を指導している。時代の変化やコロナ禍、野球人口減少などによって都立には厳しい状況が続いているが、指揮官は選手たちの可能性を信じてノックを打ち込んでいる。有馬監督は「都立で勝つには、ノーエラーが必要。城東のときもしっかりと守れたことで奇跡が起こった。あれから20年以上が経って、時代は変わっているが、都立で甲子園に行くことは決して不可能ではない。都立が勝つことで高校野球を盛り上げていきたい」とグラウンドに立つ。

■意地と情熱が飛躍の原動力  

チームは、戦える集団になってきた。昨秋は予選を突破し1回戦で三鷹に9対5で勝利したが2回戦では日体大荏原に力の差をみせられて1対10で屈した。攻守ともに不安定な一面があったが、選手たちは冬にそれぞれが課題に向き合い、進化を遂げた。チームは、守備の要・平井颯将(3年=内野手)、勝負強い打撃をみせる並里妃敏(3年=内野手)らが力を伸ばしている。エースで4番の黒崎楓(3年=投手)は、朝練でウエイトトレーニングなどフィジカル強化を続けて球速が135キロに増した。黒崎が投打の軸となるチームは、春1回戦で実力校早大学院と対戦。1対4で惜敗したが、冬の進化をグラウンドで表現してみせた。黒崎は「朝練でコツコツと積み上げてきたことの成果が出せたが、チームは勝ち上がることができなかった。自分が入学してからは3回戦が最高成績なので、それ以上の結果を残すためにみんなで全力を尽くしたい」と気持ちを込める。チームは春大会後にさらなる成長曲線を描き、夏の飛躍を予感させる。都立の意地と情熱が、躍進の原動力となる。

 

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