秋季初戦敗退を機に仕切り直しを決意
一段階上の新しい姿を追い求める
名門・静岡商が「再スタート」を切った。秋季大会の結果を受け、課題を丁寧に洗い出した上で、チーム改革に取り組んでいる。(取材・栗山司)
■0からのスタート
チームの原点は1つの負けにある。昨年の秋季大会は県予選で初戦敗退。清水桜が丘相手に先制点を挙げたものの逆転を許して、最後は引き離された。 大会後、1週間をかけてミーティングを行い、スローガンとして「粘り強さ」を掲げた。齊藤修生主将(2年=捕手)が説明する。「自分たちに足りなかったのはあと1球を粘り切る力。誰か一人の気持ちが切れたら終わりだという考えを持ち、練習から全員で粘り強さを確認しあいながら取り組むようになりました」 そして選手とともに、曲田雄三監督も覚悟を持ってチーム改革に乗り出した。 全国優勝を含む、春夏通算15度の甲子園出場を誇る静岡商。機動力を絡めながら1点を取り、堅実に守り切る野球で伝統を築いてきた。だが、時代とともに野球は変化している。「あの負けが見直すチャンスになり、0からスタートすることができた」と、もう一歩先に進むために決断した。
■体のパワーをつけて打力アップへ
具体的には打撃力の強化に舵を切った。今までの静岡商だったら「まずは守備」という前提があったが、打撃練習の比率を増やした。多い日には1日中、バットを振り続けた。 また、曲田監督は「パワーが足りていなかった」と痛感し、ウエイトトレーニングに力を入れた。 秋の大会後、3カ月間の成果が発揮されたのがシーズンの集大成となる静岡市内大会だった。準決勝までの3試合で計26得点を奪って決勝戦に進出した。 決勝戦では静岡に0対4で敗退も、新たな課題が見つかった。相手投手が投げ込む140キロに迫るストレートを打ち崩すことができなかった。曲田監督は「次に戦うときは逆に4点差をつけよう。次の3カ月でこの4点差を取り戻そう」と選手と新たに思いを共有し、オフシーズンに突入した。
■4点差をつけるために
昨年12月末の取材日も朝からバットを振り込んでいた。社会人野球で活躍したOBのアドバイスのもと、グラウンドではロングティー、室内ではティー打撃を黙々とこなしていた。体全体を使っての強いスイングが確立しつつある。 その後はウエイトトレーニング。昨年の秋から毎日欠かさず、必ず1時間をかけてきた。選手の体つきが例年以上に逞しくなっている。「4点差をつけるには、4点以上取らないといけない。守備も大事ですが、やっぱり体を大きくして打たないと勝てないと思っています」(齊藤主将) すべては2006年以来の甲子園に向けて。新たな武器を手にした静岡商の春がまもなくやってくる。