
2度の選抜出場を果たした伝統校
フィジカル強化で聖地を目指す
1981年、2012年に選抜出場を果たした伝統校・高崎。野球部は「伝統も、革新も」の志を持って新たな戦いに臨んでいく。
■トップダウンからボトムアップへ
高崎には自治が根付いている。勉学も生徒会も部活動も生徒たちで考えて行動していく精神が脈々と引き継がれる。2022年春に髙島喜美夫監督が着任してからは、野球部も生徒主体へと大きく舵を切った。冬のテーマは「フィジカル強化」。選手たちがミーティングを重ねて決定した。体力測定の数値などを比較し、自分たちには何が必要かを話し合ったという。メニュー担当・髙橋潤(2年=外野手)は「シードクラスに勝つには身体の土台が必要だと考えている。動画サイトで全国のチームの練習方法などをチェックしてフィジカル強化のメニューを提案した」と話す。選手たちは、髙島監督をはじめ、顧問の教諭、外部トレーナーの助言を受けながら創意工夫を加えていく。エース黒田湊(2年)は「与えられたメニューではなく、自分たちで練習方法を考えることで意識が高くなっていく」と効果を実感する。トップダウンからボトムアップへ。いまは進化の過程だ。
■生徒主体でチームに新たな変化
髙島監督は年末、選手たちのフィジカルトレーニングをじっと見守っていた。今季のチームは野球が大好きな選手が揃う。そんな選手たちが冬のメインテーマに技術練習ではなく、身体強化を選択したことは驚きだった。さらに、主将や副将以外の選手たちが積極的に練習メニューを提案していく姿勢にチームの成長を感じたという。塩谷遙斗副将(2年=外野手)、谷口雄真副将(2年=内野手)の二人は「限られた時間を効率的に使うためにフィジカル強化を選択した。厳しい練習をみんなで乗り越えることで一体感も生まれる」と説明する。指揮官は「普段は控えめな選手たちがメニュー考案に加わっているのも、チームにとってプラスの効果だ。私自身も生徒から学ばせてもらっている」と生徒に信頼を置く。最近の高校野球界では『主体的』という言葉が使われているが、高崎の選手たちはそれを体現している。
■群馬を制して甲子園へ行くために
校内では「伝統も、革新も」という言葉が聞かれるという。伝統を守りながらも、果敢にチャレンジしていく心意気を示している。1897年創立の高校だが、革新の積み重ねによって伝統を築いてきたのかもしれない。今季のチームは、廣澤圭亮主将(2年=内野手)、塩谷、谷口の両副将を核にして攻守のバランスが整っている。選手たちはこのチームに大きな可能性を感じているからこそ、夏に勝つための新たな選択をしたと言える。廣澤主将は「群馬から甲子園へ行くためには健大高崎クラスのチームに勝たなければいけない。自分たちで考えることは責任も伴うが、このプレッシャーを前向きに捉えて、全員で目標達成に向けて努力していく」と胸を張る。高崎の選手たちは、自分たちの意志で道を切り拓いていく。それが新たな伝統となる。