秋季東海大会で課題を認識
パワーアップしたチームは満を持して春を迎える
秋季は5年ぶりの東海大会出場を果たした常葉大橘。聖地への返り咲きを目指し、成長し続けている。(取材・栗山司)
■新たなチームスタイル
ノックでは1球の打球に対して全員で声を出しながら、全力でボールを追いかける。グラウンド全体が活気で漲っている。 練習からチームの雰囲気を大切にしている常葉大橘。過去3回の甲子園出場を誇る強豪チームだが、2012年から遠ざかっている。 就任6年目を迎える片平恭介監督。新チームから選手への接し方を変えたと明かす。これまでは「とにかく勝ちたいのでやらせないといけないと思っていた」と指揮官が全ての方針を決めていたが、選手と対話しながら考えるように促していった。 紅白戦のメンバーは選手に委ね、全体練習の時間を減らして自主練習の時間を増やした。全ては選手の力を最大限に発揮させたいとの思いからだった。 昨年4月に常葉大菊川の監督として甲子園を経験している高橋利和コーチを迎えたことも影響している。「高橋コーチと話す中で、菊川の野球を真似するのではなく、橘のスタイルにプラス菊川の雰囲気を持ってくることができている」。融合する中で新しい化学反応が生まれ、昨秋は5年ぶりに東海大会出場を果たした。
■粘り強い戦いで県準優勝
県大会の初戦と2回戦はともに4点差を跳ね返して逆転勝利。準々決勝では延長12回の死闘を制すると、準決勝は加藤学園相手にコールド勝ちを収めた。 立役者となったのが左腕の杉田洋大(3年)。中学時代は故障もあって控え投手に甘んじていたが、高校入学後に飛躍を遂げ、大会では捕手の望月大和主将(3年)の要求通りに丁寧に投げ込んだ。 一方で打線は単打を重ね、つないで得点を奪った。粘り強く、先に得点を許しても諦めない戦いぶりで県大会準優勝。片平監督は「試合をするごとに、自信を持ってくれて強くなった」と選手の成長ぶりに目を細める。
■夏は打って点を取る
選抜大会を狙った東海大会は初戦で敗退した。課題として挙がったのが長打力不足。主将の望月がこう話す。「圧倒的に東海大会に出たチームに比べて長打が少なかったです。打てないと勝てない。守っているだけでは試合に勝てないことを実感しました」 大会後の10月下旬から練習や試合で1キロの木製バットを導入。金属バットを一切使わずに、3カ月間に渡って「振る力」を養ってきた。 また、前年まではオフ期間に実戦練習を行ってきたが、今年はノックとバッティングのみをシンプルに日々繰り返した。その上で、週6日間のトレーニングでパワーアップ。個々の力が確実に上がっている。 持ち味の守備と走塁に加えて、打って点を取ることができるチームへ。11年ぶりの聖地に向かってひた走る。