今夏は常葉大菊川にリベンジ。
1997年以来の甲子園へ一致団結
春夏計5度の甲子園出場を誇る伝統校・浜松工。
夏大会は準々決勝で常葉大菊川を撃破する勝負強さをみせた。
復活の兆しをみせる伝統校は、「共有」をテーマに進化を遂げる。
(取材・栗山司)
■ 9年ぶりのベスト4進出
「浜工復活」を印象づけた夏だった。
春夏通算5度の甲子園出場を誇る浜松工。
1968年に選抜初出場を果たすと、90年代には計4度聖地を踏んだ。
そんな輝かしい歴史を持つ一方で、近年は県上位に顔を出す機会が減っていた。
だが、今年の浜松工は一味違った。
初戦で磐田南を接戦の末に下して波に乗ると、準々決勝では春の地区大会で負けた常葉大菊川を撃破する。
9年ぶりのベスト4進出。
甲子園まであと2勝と迫った。
快進撃を杉山正美監督が振り返る。
「大会中の選手たちの集中力はものすごいものがあった。
大会直前は、練習試合で負けることが多く状態が良くなかったが、スローイングを重点的に練習してきたことが生きたと思う」。
冬から夏にかけて取り組んできたのは、守備時の送球精度を上げることだった。
昨秋は送球ミスが目立ち、失点に結びついていた。
チーム全体で、ボール回しからミスを減らすように徹底。
それが夏の大舞台で発揮された。
常葉大菊川戦では捕手の掛井雄大(3年)が3つの盗塁を防止。
チームの勝利につながった。
準決勝の相手は静岡。
序盤に失点を重ね、2対4で敗れた。
そんな中で、3回途中からマウンドに上がった2年生右腕の杉田蒼希が好投。
5回2/3を3安打無失点に抑えた。
春、夏ともにベスト4進出。
あと一歩先へ。
杉田の他にレギュラーが2人残る新チームへの期待が高まった。
■ 「共有」をテーマに這い上がる
迎えた秋。
指揮官が主将に指名したのは杉田だった。
浜名、浜松商などで長年にわたって監督を務めているベテランの杉山監督が「監督人生で始めて」という投手の主将。
そこにはこんな意図があった。
「彼の『ここ』という場面での集中力はすごいものがある。
チーム全員が杉田のような集中力を持てば必ず強いチームになる。
だからこそ、杉田が先頭に立ち、チームを引っ張ってほしかった」。
しかし、注目が集まった秋の西部地区大会初戦は聖隷クリストファー相手に1対11(6回コールド)で敗退。
敗者復活戦でも浜松商に敗れ、県大会出場を逃した。
杉田は悔しさを滲ませながら、こう語る。
「練習でできていても、試合で同じようなプレーができないことがありました。
来年に向けて課題はたくさんあると思います」。
思い返せば、昨年も秋は県大会に出場できず、そこからの巻き返しだった。
杉山監督はチームのレベルアップに向け、「選手間で共有することの大事さ」を説く。
「野球面でも私生活でも、どんなことでも、全員が共有すること。
まずは一つのことに対して全員で足並みを揃えることが重要だと思っている」。
前チームよりも、さらに個々の能力は上だと評価が高い浜松工。
部員がひとつにまとまった先に、夢の甲子園が見えてくる。
静岡県立浜松工業高等学校
【学校紹介】
住 所:静岡県浜松市北区初生町1150番地
創 立:1915年
甲子園:5回(夏2回・春3回)
計8科あり、それぞれの分野で特色ある教育を行う。
2013年に文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、「世界に羽ばたく科学技術者の育成」を目指し、教育課程の開発に努めている。
OBには浦野博司(現日本ハム)、岩下修一(現日本ハム打撃投手)らがいる。