秋進撃で10年ぶりの春シード獲得。
戦力充実&意識改革で初の甲子園へ
今秋の都大会で二松学舎大附を下して3回戦へ進出した明大中野八王子。
大きなポテンシャルを秘めるチームは、さらなる飛躍の予感が漂っている。
(取材・伊藤寿学)
■ 2000、2005年夏に西東京準優勝
今秋の進撃は、春・夏ブレイクの予兆だ。
2000、2005年夏に西東京大会で準優勝を果たした明八。
悲願の初甲子園を狙うチームは、2017年夏にベスト8、2018年夏に5回戦進出するなど安定した成績を残す。
今夏を経験した選手が多く残る新チームは、この秋の都大会で大きなサプライズを巻き起こしてみせた。
1次予選で駒大高、王子総合の実力校を下して都大会へ駒を進めた明八は、1回戦で二松学舎大附と対戦することになった。
椙原貴文監督は「まさか初戦で二松学舎とは…」と苦笑いを浮かべたというが、勝算は十分あると考えていた。
それは選手たちも同じだった。
■ ジャイアントキリング
新チームのメンバーたちの多くは、今夏を経験した猛者たち。
西東京屈指の右腕・江口陽太主将(2年=投手)、攻守の要・花岡秀太副将(2年=捕手)のバッテリーを軸としたチームは、1年生タレントたちも力を伸ばし、戦力は整っていた。
花岡副将は「自分たちの力をすべて出せば、負ける相手ではないと思っていた」とゲームへ向かった。
東東京強豪と真っ向勝負した明八は、先制後に一度は逆転されたが終盤に再逆転劇を演じて、価値ある勝利を奪い取った。
初戦突破で勢いに乗ると、2回戦は工学院に快勝。
3回戦では強豪国士舘から2つ目のジャイアントキリングを狙ったが、6対7の僅差で敗れた。
指揮官は「国士舘戦は、守備・走塁などの細部の差が結果につながった。
大会を通じて手応えを得ることはできたが、さらに勝ち上がるための宿題をもらった」と振り返った。
■ 選手たちが主役
OBの椙原監督は、石田高志前監督の後を引き継ぐ形で2015年秋から指揮を執る。
母校の後輩たちを指導するために教員の道を選択した指揮官は、責任と情熱を持って指導にあたった。
チームは2017年夏にベスト8入りを果たすなど確かな実績を残してきたが、満足はしていないという。
椙原監督は「この4年間、選手たちに悔しい思いをさせてしまったと責任を感じている。
勝ちたいと思うあまり、選手たちに『MUST』で要求してしまった。
いまは、選手の声を聞き、『WILL(意志)』を尊重している」と、指導の変化を語る。
選手たちが主役となったチームには、変化の胎動が起こっている。
■ 野心みなぎるチーム
以前は「甲子園」という目標が現実的ではなかったというが、ここ数年は「明八で甲子園に行きたい」という強い意志を持った選手たちが集まり始めている。
秋ベスト16のチームは、レギュラー9人中6人が1年生という若いチーム。
須江陽海(1年=内野手)、福本真士(1年=外野手)、黒島拓実(1年=外野手)ら1年生たちが、野心をみなぎらせて練習に励んでいる。
1年生の活躍に刺激を受ける2年生たちも力を伸ばし、学年の垣根を越えた競争がチームに好影響をもたらす。
グラウンドには常に心地よい声が響き、選手たちが自主的に練習に取り組んでいる。
江口主将は「秋の悔しさを力に変えて、さらにレベルアップしたい。
個人の力は高いので、みんなの力を合わせることで初の甲子園出場を狙いたい」と前を向く。
指揮官と選手たちの思いが、聖地への道を切り開く。
江口陽太主将(2年=投手)最速137キロのストレートと多彩な変化球を操る絶対エース。
抜群の制球力を武器にチームを勝利に導く。
花岡秀太副将(2年=捕手)ゲームキャプテンを務める攻守の要。
力強い打撃と、堅実なインサイドワークでチームを牽引する。
須江陽海(1年=内野手)走攻守三拍子揃った大型ショートストッパー。
1年夏から主力としてプレーし、経験値も高い。
明治大学付属中野八王子高等学校
【学校紹介】
住 所:東京都八王子市戸吹町1100
創 立:1984年
甲子園:なし
昭和59年開校の明大付属高校。
八王子郊外の自然に囲まれた環境に位置する。
知・徳・体のバランスのとれた全人教育を目指す中高一貫校。
部活動も盛んで、野球部は2000年、2005年と西東京大会で準優勝している。