今秋大会県ベスト4進出。
意識改革浸透、いざ聖地へ
上村敏正監督就任3年目、着々と力を蓄える聖隷クリストファー。
選手たちは「頭とハートを使う野球」で悲願の初甲子園を目指す。
(取材・栗山司)
■ 頭とハートを使う野球
取材当日、午後3時半から練習が始まるということで聖隷クリストファーの野球専用グラウンドに向かうと、選手たちは掃除を行っていた。
ほうきを持ってネット裏付近を掃く選手、草を取る選手…。
誰もが目を輝かせ、率先して行動する。
約15分後、練習に入ると、空気が一変する。
グラウンドにはピリピリとした緊張感が漂う。
「やっぱり、どの学校でも、ここまでくるのには3年はかかりますね」。
そう語るのが2017年秋から指揮をとる上村敏正監督だ。
かつて浜松商、掛川西で春夏通算8度甲子園に導いた豊富な実績と経験を持つ。
名将は「普段からどういう気持ちで練習するかが大事。
それが最終的にはここ一番で力を出せることになる」と選手に説く。
能力に頼るのではなく、頭とハートを使う野球。
それが上村監督の教えだ。
今秋は、まさにそのスタイルで、県ベスト4まで駆け上がった。
西部地区5位で出場した県大会は三島北、静清を下し、準々決勝では上村監督の母校・浜松商にコールド勝ちを飾った。
突出した選手がいるわけではないが、全員で相手投手を攻略し、終わってみれば大差で勝利。
選手たちは「やることをやれば勝てる」という上村監督の言葉を信じ、東海大会まであと一歩のところまで迫った。
「やることをやる」とは―。
上村監督が一つの例を示す。
「例えば1死満塁のチャンスの場面。
普通は『ライナーをケアしよう』とベンチの選手やランナーコーチャーが言うが、走者自身も同じように『ライナーをケアしよう』と確認し合う。
そこには運動能力も野球センスも関係ない。
やるかやらないかだけです」
■ 喋ることを意識する
練習中、聖隷クリストファーの選手たちはとにかく気づいたことを口にする。
「これは違うぞ」。
「もっとこうしたらいいんじゃないか」。
「ようやく、こういうことが言えるようになってきた」と上村監督は頷く。
山口颯太主将(2年=内野手)に話を聞くと「今の自分たちは喋ることしか意識していない」という。
「喋れないと気づけないし、喋れないと発想も持てません。
練習でも試合でも何でもいいから気づいたことを口に出しています」。
さらに、こう付け加える。
「自分たちは能力がない分、他と同じことをやっていたらダメ。
上村先生から『やり過ぎてもやり残すな』と言われていますが、例えば掃除一つをとってもこだわりを持って取り組んでいます」
■ 甲子園初出場を目指して
秋の県大会準決勝。
藤枝明誠と対戦し、終盤に5点差をひっくり返されて延長11回の末に逆転負けを喫した。
続く3位決定戦でも序盤に2点のリードを奪ったが、守備のミスがあり、3対6で敗れた。
上村監督は言う。
「ここ一番で力を出せなかった。
ではどうするのか。
常に自分に負けないという気持ちを持つしかないんです」。
聖隷クリストファーは秋の自信と悔しさを胸に秘め、頭とハートを使う野球で初の甲子園出場を狙う。
聖隷クリストファー高等学校
【学校紹介】
住 所:静岡県浜松市北区三方原町3453
創 立:1966年
甲子園:なし
キリスト教主義の学校で、建学の精神である『隣人愛』を大切にする。
朝は礼拝から始まり、授業には聖書・労作といった学校独自の授業がある。
イエスキリストの教えを重んじた精神のもと、日々を送る。