
昨秋ベスト4のポテンシャル軍団の「野心」
ベテラン水谷監督は今年で指揮歴35年目
昨秋県大会でベスト4へ進出した横浜隼人。投打のポテンシャルを秘めるチームは、「一惟線進(いちいせんしん)」をスローガンに16年ぶりの聖地を狙う。
■隼人伝統の「綱引き野球」
昨秋の進撃が、春・夏へのモチベーションだ。前チームは、強打の捕手・山野井寛大(中央大進学)、最速151キロのドラフト候補右腕・沼井伶穏(東海大進学)ら投打の核が存在していた。今年のチームは、レギュラーが総入れ替え。全員が横一線で1年生(新2年生)もレギュラー争いに加わっていた。水谷哲也監督は「前のチームでプレーしたのは、エースの白鳥(拓海)だけ。新チームは形になるまで時間がかかると思っていた」と明かす。しかし選手たちは、秋の舞台で隼人伝統の「綱引き野球」を実践。鎌倉学園、藤嶺藤沢の実力校に競り勝ちベスト8へ進出すると、準々決勝では向上と対戦。技巧派左腕・白鳥拓海(3年)と正田侑太郎(2年=捕手)のバッテリーワークも光り、1対0で完封勝利しベスト4まで勝ち上がった。
■努力は無駄にならない
百戦錬磨の智将・水谷監督は今年で監督歴35年を迎えている。四国・徳島に生まれ、徳島市立でプレー。同郷の池田・蔦文也監督や、横浜・渡辺元智監督ら甲子園名将に憧れて指導者を目指し、大学卒業後に国士舘高コーチを経て横浜隼人に着任、4年目の1991年に監督に就任した。戦国・神奈川で多くの敗戦から学び、チームや学校の価値を高めてきた。そして2009年夏に甲子園初出場を成し遂げた。以来、神奈川では初出場チームは出現していない。近年は宗佑磨(オリックス)、佐藤一磨(オリックス)、青山美夏人(西武)らプロ選手を育て上げるなど、心技体の指導力があらためて評価されている。指揮官は「1年1年、選手たちと向き合ってきたら35年が経っていた。すべてのチームが印象に残っている。結果はその年によって違うが、選手たちが愚直に努力した時間は決して無駄にならない」と語る。
■秋の借りを夏に返したい
昨秋はベスト4へ進出したが、準決勝では横浜に0対9で敗れた。神奈川を制した横浜は関東、明治神宮大会でも優勝し「秋の全国制覇」を果たしている。水谷監督は「今年は、横浜が頭一つ抜けていると言われているが、全国制覇レベルの相手に勝たないと甲子園には辿り着けない。頂点に立つには、できることをやり続けるしかない」と選手を鼓舞する。秋を終えたチームは、夏へのバージョンアップを図るためレギュラーは一度リセット。2・3年生計78人の選手たちがメンバー入りをかけて切磋琢磨している。今年のスローガンは「一惟線進(いちいせんしん)」。選手全員が甲子園出場という目標へ向かい一つになることを意味している。小澤蓮主将(3年=内野手)は「今年は守備でしっかり守って、勝負所で1点を奪っていくチーム。妥協せずに『勝てるチーム』を目指していきたい。秋はベスト4になったが、準決勝で横浜に力負けしている。秋の借りを夏に返したい」と力を込める。野心をみなぎらせるチームは、16年ぶりの夏甲子園を目指す。