選手伝承「当り前基本事項」が行動指針
冬の学内強化練習で心技体を強化し球春へ

伝統進学校・湘南が、冬のオフシーズンに「ハードワーク」を重ねて進化を遂げた。年末年始や土日を中心に、13日間の学内強化練習を実施し「夏」への土台を築き上げた。

■夏甲子園を本気で狙うチーム

湘南は1949年夏に甲子園初出場で全国優勝を成し遂げた実績を持ち、春夏通算3度の甲子園出場を果たす。全国屈指の進学実績を誇る伝統校で、2025年の東大野球部主将を務める杉浦海大(東大4年)は湘南出身。2020、2021シーズンも湘南出身選手が2年連続で主将を務めている。文武の実績を残す湘南は、2023年夏にベスト16へ進出、昨夏は3回戦で横浜相手に0対4で敗れたが終盤まで接戦を演じた。
 2度目の夏甲子園を本気で狙うチームだが、昨秋の地区予選では、3戦1勝2敗で県大会出場を7年ぶりに逃した。藤原睦久主将(3年=捕手)は「自分たちの現状を受け止めるしかありませんでした」と振り返る。神奈川の秋予選は8月下旬。前チームからメンバーが大きく入れ替わった中で選手たちは力を発揮することができなかった。

■「勉強」も練習メニューの一つ

 湘南は毎年、年末年始から1、2月にかけて強化練習を行っているが、この冬は例年以上にハードワークを課した。選手たちは夜明け前の午前6時に学校へ集合。ウォーミングアップ後に1500メートル走を実施、空が明るくなり始めたらロングティーなどを行う。午前8時に学校食堂で朝食、その後は3班に分かれて「打撃練習」「フィジカルサーキット」「勉強」を40分ターンで行っていく。文武両道を貫く選手たちは練習の間に「志望校過去問題」に向き合い学力と共に集中力を養っていく。「勉強」も練習メニューの一つだ。昼食前には短距離のランメニューで瞬発力を強化。午後は紅白戦などの実戦練習を行い、夕方のインターバル走で限界まで走り抜く。川村靖監督は「“やらされる練習”も時には必要。厳しい練習を乗り越えたという自信が春・夏につながっていく」と語る。

■「当り前基本事項」を全員で復唱

湘南には「当り前基本事項」と名付けられた行動指針がある。2019年に選手たちがまとめたもので、湘南野球部の「当り前」が13項目で綴られている。「姿勢よく、何事も明るく元気に」「潔く強かに直向きに」…などの言葉が続く。選手たちは練習開始前に13項目を発し、応援歌「青春の歌」を歌い上げてグラウンドへ飛び出していく。藤原主将は「練習開始前に(当り前基本事項を)みんなで確認することで気持ちが引き締まります。勝利という結果で伝統をつなげていきたい」と気持ちを込める。「〜青春の血は火と燃えて 示す我等が心意気〜」(青春の歌)。伝統を継承する選手たちは夏の大舞台で湘南健児の心意気を示していく。

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