【レジェンドインタビュー】ID野球を体現した野球職人 飯田哲也(元ヤクルト、楽天=現・拓大紅陵コーチ)

飯田哲也(元ヤクルト、楽天=現・拓大紅陵コーチ)

「チームワークがすべて。勝つための野球を実践せよ」

ヤクルト時代、野村克也監督のもと ID野球を体現した野球職人。

いぶし銀の打撃と堅固な守備でチームの勝利に貢献したレジェンドだ。

2020年4月から拓大紅陵コーチとなった飯田氏から、球児へのメッセージをもらった。

2020年8月号掲載

-東京都出身で千葉・拓大紅陵へ進学しました。

自宅を離れての選手寮生活になったので戸惑いはありました。

練習は厳しかったのですが、良い仲間に巡り会えて充実した高校野球生活を送ることができました。

一番厳しかったのは、冬の朝練でした。

凍えるような寒さの中、朝5時から練習しました。めちゃくちゃしんどかったです。

-どんな選手だったのでしょうか?

入学セレクションはピッチャーとして合格しました。

いざ入ってみたら、いろいろなポジションをやっていく中で外野になりました。

実はピッチャーへのこだわりはなく、とにかく試合に出たかったのでどのポジションも必死にやっていきました。

1年生の秋からレフトで試合に出ることができました。

高校2年秋の新チームからキャッチャーになりました。

-とてもオールラウンドな選手ですね。

僕らの代のチームにキャッチャーがいなくて、小枝守監督から指名されて驚きました。

経験がなかったので、『大丈夫かな』というのが最初の思いでした。

なんで僕がキャッチャーになったのかは今でもわかりません(笑)。

一球でも多くのボールを受けて、ピッチャーから信頼してもらえるように努力をしていきました。

-高校野球名将・小枝監督から教えてもらったことは?

チームワーク、チームプレーの重要性です。

クリーンアップの打順だったのですが好き勝手なバッティングはさせてもらえず、チームが勝つためのバッティングを叩き込まれました。

小枝監督からは『トーナメントは負けたら終わりなので、勝つためにどうすればいいか考えなさい』と教えられました。

具体的な指示ではなく、勝つための野球を自分たちで考えなさいということだったと捉えています。

それはプロになってから役立ったと思います。

-高校3年生では春・夏連続で甲子園に出場しました。

選抜に行くためには千葉県大会を乗り越えて関東大会へ行かなければならなかったので必死でした。

結果的には、僕たちのチームは公式戦わずか2敗で、その2敗は春夏甲子園での敗戦でした。

関東では無敵で甲子園では優勝候補に挙げてもらっていましたが、勝ち上がることができませんでした。

夏は3回戦で、長谷川滋利投手がいた東洋大姫路に0対1で敗れました。

勝つための野球をみんなが実践できていて、全国制覇できる力はあったと思いますが、あと一本が出ませんでした。

負けたあとは、悔しさしか残りませんでした。

-プロ野球を意識したのは?

高校入学からプロになりたいと考えていました。

野球で生きていくしかないと思っていたので。

ドラフト当日は普通に授業を受けていて、ドラフト指名(ヤクルト3位指名)の連絡を受けました。

プロとしてのスタートラインに立ててホッとしました。

-プロ1年目の印象は?

プロのレベルに圧倒されました。

当時のヤクルトは、全員でのユマキャンプ(米・アリゾナ州)だったので、先輩たちと一緒に練習させてもらいました。

僕は18歳のヒヨッ子でしたので力不足を痛感して、この世界でどう生きていくかを考えるようになっていきました。

-ポジションは?

最初の3年間はキャッチャーをやっていました。

野村克也監督のときにセカンドになって、その次の年に外野をやるように言われました。

一つのポジションへのこだわりもあるかもしれませんが、出場のチャンスがあるのであれば、どんなポジションにもチャレンジした方がいいと思います。

野村監督が適性を見て、新しいポジションを与えてくれたことは僕にとっての転機でした。

-コンバートのチャンスを生かせたのですね。

やはり最初の試合が大切です。

そこで結果を出せなかったりミスをしてしまったりすれば、次のチャンスを失います。

巡ってきたチャンスをつかむために、どうするべきかと、練習中から考えていくことが重要だと思います。

いつ来るか分からないチャンスのために、地道に練習できるかがすべてだと思います。

-2020年4月から母校・拓大紅陵の非常勤コーチになりました。

母校が最近、甲子園に出場できていないのでお手伝いできたらいいなと思っていました。

学校の理解によって4月から非常勤コーチの役割をいただきました。

コロナ禍で5月までは練習がありませんでしたが、6月から週に1~2回指導をしています。

-選手にはどんな話をしているのでしょうか?

まずは、チームが勝つための野球をしてほしいということです。

そして、いまはコロナ禍で限られた練習環境になっていますが、その状況で何ができるかを考えてほしいと伝えました。

一人での練習も増えると思いますが、自分自身に打ち克ってほしいと願っています。

-今年は甲子園大会がなくなってしまいました。

目標としてきた大会がなくなってしまったことは、選手たちにとって辛いことだと思います。

この状況でも3年生たちが一生懸命に練習に取り組んでいる姿を見て、たくましさを感じましたし、僕自身も刺激をもらいました。

代替大会もありますし、野球人生はこれで終わりではないので、最後までやり抜いてほしいと思っています。

この経験が、必ず、次のステージへつながっていくと信じています。

-球児へメッセージをお願いします。

基本動作の繰り返しが大切だと思います。

基本ができなければ応用はできません。

いまの選手たちは、情報が多い分、高望みしてしまう傾向もありますので、できることを積み重ねて、段階を上げていく必要があります。

高校野球はトーナメントなので、チームプレーに徹することが重要です。

チームプレーを追求するには、やはり基本が求められます。

野球に近道はないので、一つひとつ階段を登っていってほしいと考えています。

【プロフィール】

1968年東京都生まれ。拓大紅陵-ヤクルト-楽天。強肩強打の野手として、ヤクルトリーグ5度の優勝に貢献。1992年に盗塁王、ベストナイン受賞。ゴールデングラブ賞7回。2020年4月から拓大紅陵非常勤コーチ&解説者。

おすすめの記事