2019年夏ベスト16の公立強豪
コロナ期間の成長は「人生の財産」
2019年夏ベスト16の公立強豪・戸塚。
約3カ月間のコロナ中断期間中に、自らの意思で力を伸ばした選手たち。
戸塚は、最後まで全力で戦い抜く。
2020年9月号掲載
■昨秋は平塚学園に惜敗
戸塚は、着々と力を伸ばしていた。
闘将・的場章監督が2017年4月に就任してから、スタイルが浸透。
2019年春にベスト16へ進出すると、その夏には進撃をみせて5回戦(ベスト16)へ進み、相洋と真っ向勝負を演じてみせた。
両者一歩も譲らないゲームは4対4で延長戦へ突入、11回にサヨナラ負けを喫した。
勝機は十分にあったがあと一本が出ずに涙を飲んだ。
新チームの昨秋大会は、1回戦で逗子、2回戦で大師を下して3回戦へ進出。
私学実力校・平塚学園と対峙し白熱の投手戦を展開、戸塚はどうしても「1点」を奪うことができずに0対1で惜敗した。
選手たちは、「1点」「1本」「ワンプレー」へのこだわりを胸に冬のトレーニングへ入った。
■仲間同士で切磋琢磨できるチーム
「今年の選手たちは、去年と比較して個人の力はやや下がるが、それを補ってあまりあるチーム力があった。仲間同士で切磋琢磨できる選手たちで、春以降に大きな期待を寄せていました」。
的場監督は、中村颯主将(3年=内野手)がまとめるチームをこう評価していた。
投手陣は、秋の背番号1・伊佐治蓮(3年=投手)と、ケガから復帰した浅井遼馬(3年=投手)が軸。
ふたりとも冬トレで球威が増し、投手力が大きく上がった。
打撃は1番・大橋慎央(3年=内塁手)、2番・内山翔吾(3年=外野手)を核弾頭に、矢田柊介(3年=捕手)、中村主将、浅井、菊池龍斗(3年=内野手)へつなぐ切れない打線が武器。
スター選手はいないが、各ポジションで役割を果たせるメンバーが揃い、これまで超えられなかった壁を突き破る可能性を秘めていた。
■約3カ月間の自主練習
しかし、春を待たずに、コロナ禍によって休校となり、約3カ月間の自主練習を余儀なくされた。
選手たちは、自宅周辺で走り込みなどを行い、週末には数人で近くのグラウンドに集まり、限られた環境でノックや打撃練習を行った。
選手たちは、甲子園大会が実施されることを信じていたが、それもコロナ禍に消えた。
的場監督は、選手たちの気持ちを受け止めながらも、高校野球の意義を問いかけたという。
「甲子園だけが高校野球ではない。甲子園大会がなくなったからといって、これまでの成果が無駄になるわけじゃない。野球を通じて人間力を高めることで、自分自身を成長させよう」。
部員たちは、これからどう野球と向き合うかのレポートを提出し、気持ちを整理した。
そして6月下旬、練習が再開した。
■コロナ期間に選手間の理解が深まる
選手たちは、それぞれが進化を遂げていた。
7月上旬の練習試合では、1番大橋がいきなり先頭打者本塁打を叩き込むなど、成果は目に見えて表れた。
代替大会までは限られた時間となるが、選手たちはそれを言い訳にせず、日々の練習に取り組んだ。
内山副将は「ZOOMミーティングの最初の頃は、選手たちから意見がなかなか出なかったのですが、だんだんとみんなが考えを言えるようになっていきました。それぞれの考えを伝えることでチームの理解が深まっていきました。実際の練習はできなかったけど有意義な時間になりました」と振り返る。
中村主将は「コロナで練習ができなくなって、初めて、自分たちにとって野球が大きなモノだったのかな、と思いました。野球ができることは当たり前ではないですし、あらためて、支えてくれている監督、コーチ、保護者に感謝しながらプレーできるようになりました」と頷く。
特別な時間を過ごした選手たちは、野球に対する思いをかみしめながら代替大会へ挑む。
選手たちは、一瞬を大切にしながら、それぞれの壁を超えていく。
戸塚高等学校
戸塚高校
【住所】神奈川県横浜市戸塚区汲沢2-27-1
【創立】1928年
【甲子園】なし
1928年に戸塚町立実科高等女学校として開校。戦後の学制改革により、横浜市立戸塚高等学校となる。野球部は2011年の春大会でセンバツ優勝直後の東海大相模に勝利してベスト8進出。2019年夏は5回戦進出。