優勝V 秋2連覇
「この勝利は選手たちの自信につながった」 光岡孝監督
「甲子園に行って3年生に恩返ししたい」 小林輝
静岡制覇で東海大会へ 今春逃した「選抜」をつかみ取れ
藤枝明誠が準決勝で加藤学園、決勝で常葉大菊川を下して秋2連覇を決めた。
士気高まるチームは、選抜切符を視野に東海大会へ向かう。
2020年11月号掲載
(取材・栗山司)
■守備と精神面を強化
藤枝明誠が秋の県大会2連覇を達成した。
今夏の代替大会は3年生で戦ったため、メンバーは総入れ替え。
光岡孝監督によると、新チーム結成直後の練習試合では1試合10個近くのミスが出ることがあり、不安からのスタートだったという。
中部大会は準々決勝で敗退。
前チームに比べ、個々の能力が劣っている分、県大会に入るにあたり、まずはエラーをなくそうと守備面を強化した。
また、精神面は「相手に向かっていない」と練習から意識を変え戦う集団を作り上げていった。
川瀬譲二主将(2年=内野手)は「去年はあくまで3年生が獲った優勝。自分たちは挑戦者の気持ちで挑んだ」と振り返る。
ターニングポイントとなった県大会2回戦。
西部地区1位の掛川西と対戦し、勝利をつかむ。
初回、プロ注目の相手左腕・沢山優介から4番の川瀬が左翼ポール直撃の3ラン本塁打を放つ。
7回には1点差まで追い詰められたが、5対4で勝利。
光岡監督は「この試合を勝ち切り、選手たちが自信を持ち始めてくれた」と話す。
■エース・小林が連日の好投
勝てば東海大会出場が決まる準決勝の加藤学園戦。
左腕の小林輝(2年)が初回に先頭打者に出塁を許すも、2番から4番を3者連続三振。
その後、毎回走者を許したものの、小林は「どんな状況でも1つずつアウトを取ることを意識した」と落ち着いた投球を展開した。
ストレートの球速は130キロ台前半も、キレのあるスライダーを武器に13奪三振で1失点完投。試合後は「気持ちで粘って投げることができました。成長につながると思います」と凛々しい表情で語った。
そして、決勝戦では常葉大菊川を圧倒する。
初回に先制すると、3回には長短8安打を畳みかけ一挙8得点の猛攻を見せた。
牽引したのは1番打者の宮城佑弥(2年=内野手)だった。
サイクル安打まであと本塁打だけに迫る4安打2打点の大活躍。
投げては前日に続き、小林が快投を演じる。
8回まで毎回の11奪三振。
9回はライトに周り、ウイニングボールをキャッチした。
■1月24日の悔しさを胸に刻み
県大会の5試合を通し、失策はわずか1つ。
相手に一度もリードを許すことなく優勝を飾った。
まさに藤枝明誠らしい、固い守備としぶとさを持ち味に勝ち上がった。
「新チーム結成の頃はここまで来るとは思っていなかった」という光岡監督。
「小林がしっかりと抑えてくれるので野手がどんどん育っていった」と試合を重ねるごとにチーム力を上げていった。
だが、決してここがゴールではない。
今年1月24日、選抜大会の選考委員会。
藤枝明誠はあと一歩で甲子園出場を逃した。
その悔しさが2年生の胸に刻まれている。
「自分たちが甲子園に行って、支えてくれた3年生に恩返しができればと思っています」(小林)
伸び盛りのチームは東海大会でも進撃を続け、2年越しの夢を叶える。