自分たちで考える「野球部」
セルフジャッジベースボール
江戸川が目指すのは選手たちが自ら考えて、自らサインを出す野球「セルフジャッジベースボール」(SJB)。SJB2年目、チームは試行錯誤を重ねながら、たくましくなっている。
■2大会連続で延長戦惜敗
江戸川が今夏、今秋の東京高校野球界に大きなトピック(話題)を提供している。コロナ禍で迎えた今夏は、練習時間が限られた中で、初戦で実力校・実践学園と対戦した。実践学園優位の下馬評の中で、江戸川が堂々の野球を展開していく。緊迫した攻防が続く熱戦は、江戸川が3対2でリードしゲーム終盤へ。8回に江戸川が2点を加えて勝利目前となったが、9回に3失点して5対5で延長戦へ。しかし延長10回に14失点して結果的には5対19で敗れたが、江戸川の野球は貫いた。新チームで迎えた今秋は1回戦で早大学院と対戦し、エース竹川葉流(2年)の投打の活躍によって9回まで2対2のスコアで延長戦に突入した。夏に続いての延長激闘となったが12回にサヨナラ負け。2大会連続で延長惜敗となった中で、江戸川は価値あるチャレンジをしていた。
■価値あるチャレンジ
江戸川は、試合のときに監督がサインを出していない。一般的に監督がサインを出さない戦い方を「ノーサイン野球」と表現するが、江戸川の場合は選手から選手へサインを送るため「ノーサイン」ではない。このチームでは、バッター、ランナーが自分たちで考えて、シグナルのように共通理解を図る戦いを「セルフジャッジベースボール」と呼んでいる。選手たちは練習メニューを自分たちで考えて、選手同士でミーティングを重ねながら、連携を高めて、公式戦へ向かう。
夏の実践学園、秋の早大学院戦、延長に突入しても選手たちは自らの判断でプレーし、そして敗れた。自分たちでやり抜いただけに、悔いはない。選手たちは実戦での収穫と課題をチームに持ち帰り、練習に反映する。練習と試合の良い循環が生まれているという。
■東京高校野球のパイオニアへ
今年の主力となる2年生は、コロナ禍の2020年4月に入学してきた選手たち。入学直後はオンライン授業が続いたため野球部入部は夏大会直前。同時期に江戸川に着任した園山蔵人監督はオンラインミーティングなどを実施して、選手たちに「セルフジャッジベースボール」の魅力を伝えていった。新たな気持ちで野球と向き合った選手たちは、自分たちで考えることで、確かな成長を遂げていったという。園山監督は「指導者の仕事は、野球の固定概念を捨てて、選手の限界を決めないこと。自分たちでサインを出してプレーすることで、監督が考えている以上の力を発揮してくれている。あとは結果がついてくれば、さらに成長できるはず」と選手のサポートを続ける。チームの目指す道は、勝利至上ではなく、SNSで「いいね!」を増やすように「GOOD GAME」を積み重ねること。
森坂翼主将(2年=内野手)は「『GOOD GAME』を増やすことが結果につながっていく。自分たちらしい『GOOD GAME』を追求していきたいと思います」と、笑顔をみせる。江戸川は「GOOD GAME」を増やすことで、東京高校野球のパイオニア(開拓者)となる。