【栃木工  野球部】 「最弱から最強へ」 #栃木工

水害、コロナ禍の試練を乗り越えて
全員野球で 悲願の甲子園へ

 伝統に基づく戦いで実績を挙げてきた栃木工。今年のチームは例年に比べて部員数が少ない年。選手たちは切磋琢磨しながら最強を目指す。

■水害などの影響で部員減  

栃木工は、2019年秋の台風被害によって学校全体が浸水し大きな被害を受けた。練習グラウンドも水が入り、復旧までに半年以上の時間を要した。今年の3年生は、水害の翌春に入学してきた選手たち。学校定員の削減などの影響も受けて、例年20人以上の部員が16人に留まった。さらに2020年春の新型コロナウイルス感染拡大によって学校がオンライン授業となり入部が遅れた。チームへの合流は夏の代替大会直前。代替大会後も練習時間が制限されて翌年冬も活動休止になるなど、成長の機会が奪われた。周囲からは「最弱世代」というフレーズが聞こえてきた。

■コンバートによってチーム力アップ  

昨年の秋季県大会では初戦で連合チームに勝利。2回戦では宇都宮商と対戦。早乙女亮生主将(3年=内野手)が負傷欠場した状況で終盤までリードして勝利は目前だったが、経験値の少なさなどが影響して最終回に逆転を許してしまった。日向野久男監督は、選手たちを連れて、各地域の優勝校が集う明治神宮大会を観戦に行くなど視野を広げさせた。この頃からチームには変化が見えていた。部員数は少ないが、その分、一人当たりの練習量は増える。早乙女主将を軸にしたチームは、練習中から心地よい声が飛ぶなど活気が生まれてきた。指揮官は、遊撃手だった戸田京佑(3年)の俊足を活かすためにセンターへコンバート。内田智康(3年)を遊撃手に据えて、早乙女主将と二遊間を組ませた。主砲・佐藤憧英(3年)が三塁を守り、攻守のバランスは整った。さらに、秋大会後にサイドスローに転向した赤羽根陽向(3年)の球威が著しく上がり、投手の柱ができた。

■結束力はどのチームにも負けない  

今年の冬も部活動が休止となり難しい時間となったが、選手たちは各自が自宅でトレーニングを重ねて、活動再開を待った。活動明けの初日は自主練だったが選手全員がグラウンドに集まり、白球を追った。野球に飢えた選手たちは、1日1日練習に集中。春休みの練習試合では県外強豪に勝利するなど大きな手応えをつかんだ。日向野監督は「このチームには一体感があり、みんなが同じ方向へ進んで努力ができる。つらい練習も楽しそうにやってくれるし、夏に向けて期待感を抱かせてくれている。最弱ではなく最強のチームになるかもしれない」と目を細める。早乙女主将は「人数は少ないが結束力はどのチームにも負けない。全員野球で夏の甲子園を目指す」と前を向く。最弱から最強へ、甲子園へのルートはハッキリと見えている。

 

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