夏ノーシード、最強のチャレンジャー
2018年夏以来の甲子園へ
春夏通算甲子園出場計27回を誇る伝統校・慶應義塾。未知なるポテンシャルを秘める今季のチームは、2018年夏以来の甲子園を目指す。
■夏に向けて周知結集
慶應義塾が夏に向けて力を蓄えている。昨夏の神奈川大会は初戦でいきなり桐蔭と対戦して5対4で勝利。進撃をみせたが甲子園への夢は準決勝でついえてしまった。選手は大きく入れ替わったが、横地広太(3年=外野手)、宮原慶太郎主将(3年=内野手)らが夏を経験。加えて、村岡龍(3年=外野手)、吉野太陽(3年=投手・内・外野手)ら中学時代に実績を残した選手も多く、潜在能力は極めて高い。昨秋の県大会は3回戦で桐光学園に屈し、今春は3回戦で桐蔭学園に敗れたが、相手はいずれも実力校。春の桐蔭戦では7回まで1対0とリードする状況下で8回に5失点、最後まで食らいついたものの4対5の敗戦となった。その壁を越えれば結果は大きく違っていただろう。主軸の吉野は「夏は、取られても取り返す攻撃力をつけていく。打撃面は伸びしろと考えている」と夏に照準を合わせる。
■自分自身と向き合い、強くなる
コロナ禍でも選手たちは心技体で成長を遂げている。例年と比較して練習時間、練習試合回数は限定されたが、オンラインミーティングや自主トレでカバー。選手たちは逆境を力に変換してきた。森林貴彦監督は「練習時間こそ短かったかもしれないが、その分、自分自身と向き合う時間が増えた。それぞれが目指すスタイル、フォームについてじっくりと考えることができたこともあり、自己確立につながっている」と話す。選手たちは、部訓である「Enjoy Baseball」を軸として、自身をとことんプログラミングしてきた。大会後のミーティングで、選手全員が全打席、全プレーを振り返り、意見を交換。打者の一打席は、個人のモノではなく、チームのモノ。すべてのプレーに、全部員の英知を結集する。その成果を発揮するのが、夏の舞台だ。
■最強のチャレンジャー
投打の軸は整いつつある。春季大会は投手陣が万全ではなかったが、エースの本格派右腕・広池浩成(3年)、左腕・吉田雄亮(3年)の左右主戦が安定。横地、宮原、吉野の打撃陣も迫力を増す。夏は昨年に続いてノーシードエントリーとなるが、一戦一戦で成長することが頂点へつながっていく。今年のチームのスローガンは「努来勝」。「どっこいしょ」と読むという。攻守のキーマン村岡は「努力を続けることで、必ず勝利がやってくる。部員全員の努力が甲子園につながることを信じている。自分たちはノーシードなのでチャレンジャーとして一戦一戦に全力を尽くす」とグラウンドへ向かう。チームスローガン「努来勝」のサブタイトルは「奇跡舐めんじゃないよ」。選手たちは、努力を積み重ねることで、夏の奇跡を起こしていく。