秋・春は不完全燃焼の名門
満を持して迎える夏、甲子園出場を誓う
故障による離脱に苦しんでいた今季の静岡。万全の体制が整わないまま秋、春を乗り越えてきた。そして今、ようやくベストメンバーが揃い、最後の夏を迎える。(取材・栗山司)
■甲子園で勝つことが使命
春夏通算43回の甲子園出場を誇る静岡。ネット裏には明治、大正、昭和、平成、令和と連なる歴代部員の名が記され、昨年に新設された同じくネット裏のボードには輝かしい全国大会出場記録が掲示されている。あらゆる場所で伝統の重みを感じることができるのが静岡のグラウンドだ。 初代から数えて3年生が140期にあたる本年度は苦しい1年となった。秋、春ともに県準々決勝止まり。チームの柱が故障で離脱したことが響いた。エース候補の齋藤童獅(3年)が昨年春に右膝の靭帯を損傷。12月から投球を再開したが、右ヒジの痛みで春の大会も未登板に終わった。 また内野の要の松永将大(3年)も故障で離脱。欠けたピースを埋めることに苦労した。 それでも甲子園で勝つことが名門の使命。冬場は苦しい練習を全員で乗り越えてきた。主将の遠藤碧真は(3年=捕手)はこう話す。「冬は何をするにも甲子園のレベルで物事を考えようということで、常に自分たちは甲子園、甲子園って口に出して練習してきました」 甲子園のレベルを基準にして、そこに達しているのか、達していないのか。チームで物差しを作って取り組んできた。
■ベストメンバーで臨む夏
春はセンバツ帰りの常葉大菊川に4対7で敗退。遠藤は「反省することのほうが多いですが、自分たちが冬にやってきたことは間違っていなかったんだと感じた春でもありました」と振り返る。相手を上回る12安打をマーク。失点はミス絡みで、課題は明確となった。 夏を前に齋藤と松永が復帰。ようやくメンバーが揃い、自ずとチームの士気は上がった。6月下旬には選抜大会優勝の山梨学院と練習試合を行った。8対9で敗れたものの、「やれるんだ」という手応えを掴んだ。池田新之介監督も「2人が戻ってきたことが大きいですし、夏の大会に入ってからも、まだまだ成長していくチーム」と伸びしろに期待する。
■魂を一つに戦う
今年度のスローガンは「魂」。「1球に対してひたむきに思いを込めよう」と新チームが結成された際に決めた。「夏は気持ちの部分も大事になると思うので、魂を一つにして勝負していきます」(遠藤)。 魂の文字。画数が14画で、今年の3年生の部員数は14人。不思議な縁もある。4月には新たな魂も加わった。OBの櫻井理規部長が赴任。池田監督の静岡コーチ時代の教え子で、高校2年時に甲子園の土を踏んでいる。 捲土重来。「静高魂」で夏の頂点を獲る。(7月7日現在)