今秋都大会初出場の都立伝統校。
杉山監督就任4年目、進化のターニングポイント
今秋大会で(現制度)初の秋都大会出場を果たした鷺宮。
「都立の野球」を知り尽くす杉山真司監督の指導のもと、チームは変化の瞬間を迎えている。
(取材・伊藤寿学)
■ 都大会に新たな風
実績のなかった都立高が、2019年の秋季都大会に新たな風を吹き込んだ。
鷺宮が、本大会に進出したのだ。
鷺宮が一次予選1回戦で駒場学園とのシーソーゲームを8対7で制すると、一次予選決勝・成城戦では延長11回の激闘の末に4対3で競り勝ち、都大会切符をつかんだ。
鷺宮が秋都大会に出場するのは、現行制度になってから初。
野球部にとっては快挙と言えるものだった。
■ 経験豊富な指揮官
変化の起点は、経験豊富な杉山監督が着任したことだった。
新宿定時制時代は、全国定時制大会で全国3位を達成。
武蔵丘、練馬などで指揮を執った指揮官の異動によって、鷺宮は変わっていった。
杉山監督は、都心から程近い場所にありながら練習試合ができるグラウンド環境に着目、ウエイトルームなどを有効活用しながらチーム強化を図っていった。
杉山監督は「これまでは勝つことができていなかったが、この環境があればチームは変わっていくと考えた」と異動当時の印象を話す。
■ 都大会は成立相手に堂々の戦い
鷺宮は、2009年以降7年連続で夏勝利がなかったが2017年、8年ぶりの夏勝利を果たすと、2018年夏も勝利を挙げた。
変化の胎動をみせていたチームは今秋、予選を突破し、都大会へ進出。
1回戦・成立学園と対戦し、甲子園出場経験のある実力校に対して、粘り強い戦いを披露。
勝機はあったものの決めきれずに最終的には2対3で惜敗した。
1年生・主砲の浅野龍(捕手)は「成立学園戦では緊張して自分のスイングができなかった。
勝つチャンスはあったが自分のミスが絡んで負けてしまったので本当に悔しい。
あの悔しさを、春、夏にぶつけていく」と、本気を見せる。
鷺宮は午後7時完全下校のため平日の練習時間は、午後4時から午後6時過ぎまでの約2時間。
指揮官は、足りない時間を補うために自宅などでの自主練を推奨。
今秋大会後には、自宅での練習や勉強を記していく「自主練習シート」を作成し、選手の意識改革を求めた。
杉山監督は「着任当時、何もなかったチームが変わってきている。
野球の実績がない学校でも、勝てることを教えて、鷺宮野球部の新しい文化を作っていきたい」と、情熱を傾ける。
秋都大会出場は、ゴールではなく単なるスタート。
鷺宮躍進のストーリーは、ここから「本編」へと突入していく。
東京都立鷺宮高等学校
【学校紹介】
住 所:東京都中野区若宮3-46-8
創 立:1912年
甲子園:なし
明治45年に実業女子校として開校。
1949年に共学化し翌年に鷺宮高に改称。
2012年に創立100周年。
野球部は2017年夏に7年ぶり夏勝利。
2019年秋は、現都大会制度移行後、初本戦出場。
主な卒業生に作家・群ようこ、寺門ジモン。