甲子園出場4度の古豪。
創立100年に向けて復活の兆し
1920年に創立し、戦前の中等学校優勝野球大会に2度出場するなど、県内屈指の伝統校である県商工。
甲子園出場は1950年が最後だが、春秋の県大会常連校として存在感を示している。
(取材・大久保泰伸、撮影・大久保泰伸/飯竹友彦)
■ 影響を受けながら磨いてきた指導法
2016年に完成した新校舎は近代的な外観で、来年に創立100周年を迎える伝統校とは思えないモダンな雰囲気だ。
2018年に就任した畠陽一郎監督は、身長190センチはあろうかという大柄な体に似合わず、物腰の柔らかい姿勢で、選手に対してもフレンドリーに接する指導者だ。
中学時代にすでに180センチ以上あったという畠監督は、体が大きすぎるが故の悩みを常に抱えていた。
「他人と比較するのではなく、デカいならデカいなりのことをやればいい。
そう言われて気持ちが楽になった」。
当時指導を受けた先生の言葉が、自らも指導者を目指すきっかけになったという。
プロ野球選手になる夢を持っていたが、大学で周囲とのレベル差を感じ、指導者になることを決めた。
教師になる前には、社会経験を積むために一般企業に就職。
その時の経験が「現在も生きている」と畠監督は言う。
最初の赴任校である大和南では、2017年春の県大会で快進撃をみせてベスト16に進出。
松山大介部長との二人三脚だったが、自分とは違うアプローチの仕方で選手の闘志に火を付ける部長の指導に影響を受けた。
畠監督は、多くのことを吸収しながら指導に反映させている。
■ メンタルからのチーム作り
着任2年目となった今夏は1回戦で神奈川大附に3対2で勝利した後、2回戦で立花学園に0対10で完敗。
新チームの秋大会予選では磯子工と南に勝利し県大会出場を果たしたが、1回戦で七里ガ浜に4対5で惜敗した。
県商工での指導はまだ2年だが、大会を通じて感じたのは精神面の問題だった。
指揮官は「去年も今年もメンタルの課題は同じ。
自分たちの力が発揮できないもどかしさがある。
重要なのはどんな相手にも怯まないメンタルだ」と説く。
今年のチームは、エースの菅広太朗(2年)と捕手・関根飛勇馬(2年)のバッテリーがチームの核となっている。
2人は公立校では県内でも好選手と評価される存在だ。
2人のリードで、全体の底上げが実現すればチームの可能性は高まる。
全盛時には100人近くの部員がいた古豪も現在の部員数は2学年で17人。
「全員野球」をスローガンに掲げるチームの目標は、夏大会でのベスト16。
古豪復活に試行錯誤を続ける指揮官は、いかなる状況でも常に前向きな姿勢を忘れない。
ポジティブ・シンキングも、監督の言うメンタルのひとつであることは言うまでもない。
県商工は、心技体を鍛えて古豪復活を遂げていく。
神奈川県立商工高等学校
【学校紹介】
住 所:神奈川県横浜市保土ケ谷区今井町743
創 立:1920年
甲子園:4回(春1回・夏3回)
神奈川県立商工実習学校として設立され、1948年に神奈川県立商工高等学校と改称。
2020年には創立100周年を迎える県内屈指の伝統校で、野球部は戦前などに4度の甲子園出場歴を持つ古豪。
日本ハムなどで監督を務め「親分」と呼ばれた故大沢啓二氏は野球部OBのひとり。