
JR新宿駅から徒歩4分の伝統進学校「都立新宿」の挑戦
勝利と人間的成長の2つのゴールを目指す
都立伝統校・新宿は、野球というスポーツを主体的に楽しみながら、高校野球の魅力を最大限に追求していく。そこには高校野球の原点がある。
■大会結果以上に大切なモノ
JR新宿駅南口から徒歩4分の場所に位置する都立・新宿。1921年(大正10年)に東京府立第六中として創立され、産官学に多くの人材を輩出してきた伝統校で、1979、1993年夏の東東京大会でベスト8へ進出した実績を持つ。
最近では2022、2023年夏に4回戦へ進出するなど、伝統の力を誇示。今夏は都立屈指の本格派右腕・生田琉晟(3年)、攻守の要・江森大智(3年=捕手)を軸にした戦いで、2回戦で好投手を擁する学習院に勝利。
3回戦ではシード帝京と真っ向勝負し敗れたものの、選手たちは新宿の地で学んだ技を随所で発揮しベストを尽くした。3年生たちは結果以上に大切なモノを手にして高校野球生活を終えた。
■勝利と人間的成長の2つのゴール
コロナ禍などを経て高校野球を取り巻く環境が変わる中で、新宿に“新たな価値”を植え付けているのは、OBの長井正徳監督だ。
新宿から日体大へ進学。大学時代から母校・新宿の助監督(学生コーチ)として後輩たちを指導。大学卒業後に都教員となり、特別支援や定時制で勤務した。
硬式野球指導からは離れていたが、長男の中学チーム指導に保護者コーチとして携わり、イマドキ世代の指導に触れた。そして2019年春に母校・新宿に着任し、2023年7月下旬から監督を務めている。
チーム理念は、幸福感を意味する「Well-being」と「THE DOUBLE GOAL」。選手を含めチームに関わる人たちが満足し心から応援できるチームを作っていく。そして選手は、勝利と人間的成長の2つのゴールを目指す。
■チームの一員として役割を遂行
チームの主役は、プレーヤーである生徒たち。午後6時に完全下校のため、平日の練習は2〜3時間。選手たちはそれぞれの課題に向き合いながら、チームの一員として役割を果たしていく。
夏大会後に始動した新チームは、清水祥大主将(2年=外野手)を中心に士気が高まっている。今夏は3年生が主体だったためチームは大きく入れ替わったが、戦える集団になってきた。2年生マネージャーの増田珠織さん、上野七星さんは「夏休みを越えてチームらしくなってきました」と手応えを感じている。
チーム目標は過去最高位のベスト8。エース伊澤伸途(2年)が「野球と勉強を両立しながら人としても成長していきたい」と話せば、清水主将は「限られた環境でもシードクラスを倒せることを証明したい」とチームを牽引する。
「高校野球が終わったときに彼らに何が残るかが大切。野球が好きなまま次のステージへ向かってほしい」(長井監督)。選手たちは高層ビルの明かりの下、自分たちの目標へ向かって邁進していく。








