【関東一 野球部】「昨夏を超えて」

昨夏甲子園ベスト8、国体優勝。

昨年以上の戦力で都独自大会へ

昨夏の甲子園でベスト8へ進出した関東一。

全国のレベルを肌で感じた選手たちが残る今年のチームは、全国制覇を狙える戦力が揃っている。

甲子園は中止になったが、独自大会でその力をみせつける。

2020年8月号掲載

■ 先輩たち以上の結果を残したい

昨夏は、東東京を制した。

土屋大和、谷幸之助のダブルエースを擁して3年ぶりの甲子園出場を決めると、甲子園でも勇姿をみせた。

日本文理、熊本工、鶴岡東を接戦で下して準々決勝へ進出すると、最終的に優勝した履正社と対戦。

初回に3点を先制するなど見せ場を作ったが総力戦の末に3対7で敗れて進撃はベスト8で止まった。

しかし戦いはまだ終わらなかった。

国体に出場すると、盤石の戦いをみせて見事優勝を果たした。

2020年のチームは、重政拓夢(3年=外野手)、岡澤敦也(3年=内野手)、市川祐(2年=投手)ら昨年夏を経験したメンバーが残り、夏甲子園制覇を目標にスタートを切った。

リードオフマン重政は「去年の3年生たちが素晴らしい景色をみせてくれたので、先輩たち以上の結果を残したいと思いました」と話した。

■ スケールアップした選手たち

昨秋大会は、時間との戦いだった。

甲子園直後に秋予選が始まったが、予選後に国体遠征があり、その後に秋都大会となった。

新チームでの時間が限られた中で、1回戦日大鶴ヶ丘、2回戦で駒込学園を撃破すると、3回戦で帝京とぶつかり激戦の末に7対9で敗れた。

星瑠斗(3年)は「投手陣が耐えることができずに負けてしまった。

チームとしての力が足りませんでした」と振り返る。

選手個々の力はあったが、チームとして未完成だったことは否めない。

チームは春、夏に向けてのトレーニングに入っていった。

夏の東東京連覇という明確な目標があっただけに選手たちの士気は高かった。

今年の選手たちは、自分たちの足りないところを受け入れて、全体で切磋琢磨できる仲間たちだった。

投手陣の今村拓哉(3年)、星、市川はそれぞれがスケールアップ。

今村拓哉(3年)
 背番号1を背負う左の本格派。しなやかなフォームから、ホームベース上でホップするような伸びのあるストレートを投げ込む。最速137キロだが、夏は140キロ以上を計測するのは確実。今秋のドラフト候補だ。

星 瑠斗(3年)
 右サイドから威力あるボールを投げ込む骨太投手。1年前にサイドスローに転向し、才能が開花。球回転数が大幅にアップしキレが増した。スライダー、カットボールに加えてフォークも習得。夏にすべてを懸ける。

市川 祐(2年)
 身長185センチ83キロの大型2年生右腕。1年秋に最速139キロを計測したが冬を越えて球速は確実にアップ。フィジカル強化によってストレートの威力も増した。順調に成長すれば来秋のドラフト候補だ。

打撃陣も渡邊貴斗主将(3年=捕手)、重政、岡澤らに加えて、町田雄大(3年=内野手)、藤田七五斗(3年=外野手)も力を伸ばした。

■ 「まだ終わりじゃない」

甲子園大会中止が発表された夜、チームはウェブ会議システムでミーティングを実施した。

「まだ終わりじゃない」。

米澤貴光監督は選手たちにこう伝えたという。

選手たちは、状況が整理できない中、監督の言葉を受け止めて気持ちを切り替えていった。

渡邊主将は「小さい頃から甲子園を目標に練習をしてきたので残念です。

甲子園には行くことができませんが独自大会で野球ができるので全力を尽くしたい。

自分たちの代しか経験できない特別な大会で優勝して、歴史に学校名を残したいと思います」と、最後の夏へ向かう。

コロナ休校中、自宅に戻っていた選手たちは5月末に選手寮に戻った。

そして6月下旬から本格的に練習を再開した。

選手たちの表情は一様に明るく、ワンプレーワンプレーからは野球ができる喜びが伝わってきた。

甲子園出場、そして全国制覇は叶わぬ夢となったが、選手たちは、それ以上に大切なものを仲間とともに掴みにいく。

関東第一高等学校

【学校紹介】
住 所:東京都江戸川区松島2-10-11
創 立:1925年
甲子園:14回(春6回・夏8回)
江戸川区の野球強豪校。学校最寄り駅は「新小岩」。練習場は、千葉県白井市。1987年選抜準優勝。2015年夏甲子園ベスト4。最近のプロ選手はオコエ瑠偉(楽天)、石橋康太(中日)。

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