創部12年目、青年監督が育てる野球部
2年前の“財産”で新たな歴史を作る
2009年の共学化とともに始まった目白研心野球部の歴史。日大三を破る大金星を挙げた2018年秋からのさらなる成長と進化を誓う。(取材・三和直樹)
2021年1月号掲載
■2人から40人へ
照明が灯った球場に、乾いた金属音とナインたちの笑顔が弾ける。
「最初は部員2人のところから始まって、公式戦に出場するまで3年かかった。そこから少しずつですけど階段を昇ってきた。自分たちが強くなってきたという実感は持っています」。
2009年の創部から12年目の秋を迎えた目白研心野球部の鈴木淳史監督は、これまでの足取りと現チームの実力に確かな自信を見せる。
現在、部員数は2年生20人、1年生21人の計41人で、2学年のみの人数では過去最多。「野球人口が少なくなってきている中で非常にありがたいこと。今は2チームに分けて練習試合ができますし、チームの総合力は今までにないほど高いものがある」と鈴木監督。新宿区中落合にある学校のグラウンドは、他部との共用で使えるのは週1回のみ。そのハンディを補うために、江戸川区や立川市、昭島市などの球場を借り、5〜6箇所を回りながら日々、汗を流している。
■乱戦での敗戦にも収穫があった
新チームとなって迎えた秋季大会は、一次予選で国立を5対2、正則学園を9対3で下して3年連続で本大会に進出した。
迎えた1回戦では、鈴木監督が「正直、嫌な相手に当たったと思いました」という日大二と対戦し、乱戦の末に10対12で敗退。初回から点を取り合った後、7回裏に3番・鴨治宗吾(2年)のタイムリー3塁打などで3点を奪って5対3と逆転に成功したが、8回表に相手の猛攻を受けて大量9失点。その後、5点を返す粘りを見せたが、わずかに届かなかった。
「伝統校の力を感じた試合でしたね。目に見えない力を感じた」と鈴木監督は振り返るが、「この時期に日大二高さんのような相手と戦った経験は必ず今後に活きてくる。収穫は大きい」と語る。
投手陣は、独特の球筋で空振りを奪う左腕・安保優太郎(2年)がエースに君臨して絶賛成長中。打線では、「1番・ショート」の好選手・有田康仁郎(2年)からチャンスを作り、4番には主将として絶大な信頼を寄せられている各務功太(2年)がどっしりと座る。投打に魅力的なメンバーが揃っている現チームに鈴木監督は、「キャプテンを中心に非常に明るい。1年生の時から試合に出ているメンバーも多いですし、今後が非常に楽しみ」と期待を寄せている。
■新しい歴史を作る
目白研心が一躍注目を集めたのが、創部10年目の2018年秋だった。その年の夏の甲子園で4強入りした強豪・日大三と秋季大会1回戦で対戦し、7対5で勝利する“大金星”を挙げた。「その財産が、今の2年生です」と鈴木監督。「彼らは日大三高との戦いを見て入部してきた代で、最初から意識が違っていた。この代をキッカケにして、目白研心の新しい歴史を作りたい」と意欲満々に前を向く。
その指揮官が求めるのは「自分たちで考える野球」だ。「自分で考えて、自分で動けるのが理想」と自主性を求める。その中で選手たちは伸び伸びとプレーし、成長を続けている。鈴木監督自身、高校時代に甲子園に出場してホームランを放った男でもあるが、「僕自身よりも、今の生徒たちの方が可能性を感じる。彼らはこれから、もっともっと成長できる」と目を細める。創部以来、進化の階段を上がり続けてきた目白研心が、力強く、新たな扉を開こうとしている。