【総合工科 野球部】「迷うことなく、真っ直ぐに」 #総合工科

3カ月にも及ぶ活動禁止期間を経て
悔いなく、精一杯、全力で突き進む

2006年の創部から瞬く間に都立の強豪校に数えられる存在となった総合工科。コロナ禍が長引く中のでも気持ちを切らすことなく「夏」を目指す。(取材・三和直樹)

■ようやく戻ってきた風景

桜満開の春。久々に足を踏み入れたグラウンドは眩しく輝いていた。「やっぱり野球って楽しいなって思いました」と服部正治主将(3年=捕手)。昨年12月中旬から約3カ月にも及ぶ活動中止期間を経て、3月22日から部員全員での練習を開始。心地よい汗とともに、自然と笑みがこぼれた。

「部員たちは孤独だったと思います」。就任4年目に突入する弘松恒夫監督は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で自主トレ期間が長く続いた教え子たちの心情を慮る。校内には都大会の予選にも使用する両翼92メートル、センター120メートルの天然芝の野球部専用グラウンドがあり、そこで年間200試合以上の練習試合を行いながら強化を続けてきたが、昨年から続くコロナ禍の中で、これまでとは全く異なる日々が待っていた。だが、彼らは逃げなかった。「練習を再開した時の部員たちを見た時は安心しました。たくましい表情をしていた」と弘松監督。野球への情熱は誰にも奪うことはできない。緊急事態宣言明けのグラウンドには、いつもの風景が戻るとともに、いつも以上の活気にあふれていた。

■体力と知識、メンタリティ

どこにいても成長はできる。自粛期間中、弘松監督が部員たちに指示したことは「食べること」と「ペンを持つこと」。昨年12月にはトレーニングの講師の下、部員の保護者向けに体作りの勉強会を実施し、加圧トレーングなどの方法を学び、その上で冬の間は1日6食以上を目標にして体重増によるパワーアップに取り組んだ。さらに、同校に昔から伝わる野球の技術、心得などを「スキル編」、「バッテリー編」、「雑草魂・志編」に文書化した『野球マニュアル』をそれぞれの野球ノートに毎日模写した。「1日10分ぐらいで終わるんですが、それを毎日やること」(弘松監督)。各自、孤独な時間を過ごす中で、体力と知識、メンタリティを鍛えた。

その成果を見せるのは、これから。「4番・捕手」を務める現チームの大黒柱・服部主将は「まだ本来の動きに戻れていない選手もいますけど、自粛期間中にたくさん食べて体も大きくなっているのはわかる。ここからは技術面、連係面を上げていってチームを作り上げていきたい」と燃えている。

■「一瞬一瞬を大事にして」

チームの自慢は爆発力のある打線だ。平均身長が高く、3年生18人中6人が180センチ以上。切り込み隊長である太刀川寛隼(3年)から始まる上位打線には長打力があり、4番にはチームメイトから絶大な信頼を寄せられている服部主将がドッシリと座る。そして下位打線が粘り強く繋ぐ。投手陣が課題だが、エースとして期待される竹内快(3年)が自主トレ期間中も近所の公園で投げ込みを続けて着実に成長。「自分が投手陣を引っ張っていけるようにしたい」と意欲満々だ。

「まだ粗いですけど、楽しみなチーム。一人一人の力を生かす戦いができれば、強豪にも太刀打ちできる」と弘松監督。練習再開初日には、その弘松監督とともに3年間、二人三脚でチームの指導・強化に当たってきた間宮康介顧問が4月より他校へ転任することが知らされた。春季一次予選は中止となったが、選手たちは前を向く。「自分たちが高校生として野球をできる時間は短い。一瞬一瞬を大事にしてやっていきたい」と服部主将。もう迷いはない。夏までの残り4カ月、悔いなく、全力で、真っ直ぐに突き進むだけだ。

 

 

 

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