【日大 野球部】「高校野球の成功とは?」

グラウンドに戻った選手たち。

代替大会は「感謝」「成長」を伝える場

コロナ禍となり、甲子園へ続く夏大会は中止となった。

練習再開後、再びグラウンドに戻った日大の選手たちは、「高校野球の成功とは何か?」を追求していった。

2020年8月号掲載
(取材・伊藤寿学)

■ 秋大会は主将不在で敗戦

コロナ禍により、選手たちの時間は止まってしまった。

昨秋大会は、県大会初戦で橘学苑と対戦した。

その試合は、攻守の要である久富雅之主将が海外研修直後だったためスタンド観戦。

橘学苑には、予選で対戦し、コールド勝ちを収めていたが、キャプテン不在で自分たちの力が発揮できなかった。

序盤から失点を重ねると、最後まで流れを引き寄せることができずに5対10で敗れた。

久富主将は「勝ってくれると信じていましたが、チームの力を発揮することができなかった。

秋の敗戦を受け止めて、春、夏で結果を残すしかないと思っていました」と振り返る。

選手たちは秋の屈辱を糧に、冬トレに臨むと、それぞれがレベルアップを遂げた。

だが、コロナ禍によって学校が休校となり、部活動も停止となった。

■ 目標が消えた中で「目的」を再確認

甲子園大会はなくなった。

今年のチームはコロナ中断前から、伊藤謙吾監督の指導のもと「高校野球の成功とは何かをミーティングで話し合っていたという。

選手たちからは、「努力」「親への感謝」「仲間との絆」などの声が上がっていた。

高校野球は甲子園出場や結果がすべてではなく、そこから何を学ぶかが大切となる。

目標は甲子園だが、目的は自身、チームの成長だ。

コロナ状況下で、奇しくも甲子園という「目標」が消えた中、選手たちは「目的」を再確認して、リスタートを図った。

学校は6月から分散登校となったが、部活動が本格的に始まり、全員がグラウンドに揃ったのは7月1日。

選手たちは野球ができる喜びを感じながら、白球を握り、バットを振った。

■ チーム全員で神奈川の頂点へ

代替大会開幕まで残された時間は、限られている。

例年のチーム作りの過程は、効力を発揮しない。

「すべてをやろうとするには時間があまりにも少ない」と話す指揮官は、「選手のコンディション」、「目(スピードに慣れる)」、「試合感覚」の調整に絞って、チームを段階的に仕上げていった。

代替大会は、高野連の計らいによって、幸いにも1試合ごとの選手の入れ替えが許可されている。

伊藤監督は「3年生は29人いるが、練習試合もできていない今年はメンバー選考の“材料”がない。

一人でも多くの選手がベンチに入って戦えるように、1試合でも多く戦って、神奈川の頂点を目指す」と語る。

選手たちは、野球ができることに感謝し、1球1球に向き合った。

限られた時間だが、選手たちは急激に成長していったという。甲子園大会は中止になったが、「高校野球の成功とは何か?」を追求することで、選手たちは変わった。

選手たちは、甲子園よりも大切なことを、グラウンドで学んでいる。

日本大学高等学校

【学校紹介】
住 所:神奈川県横浜市港北区箕輪町2-9-1
創 立:1930年
甲子園:なし
昭和5年に開校した日大付属高。高い進学実績を誇るほか、国際教育に力を入れる、2017年度は「スーパーグローバルクラス」を新設。野球部は、2016年春準優勝、2017年夏ベスト4。

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