昨秋の悔しさを原動力に成長したチーム
春は無念の出場辞退で夏に全てをかける
昨春の東海大会を制し、続く昨夏は県ベスト4と、伝統名門校としての矜持を示した掛川西。それに続きたい現チームだが、秋は惜敗、春には出場辞退と悔しい状況が続いている。(取材・栗山司)
■昨秋は無念のサヨナラ負け
高々とそびえ立つ掛川城をバックに、選手たちが躍動する。「秋、春と悔しい思いをして、夏にかける思いは強いです」。そう熱く語るのが大石卓哉監督。現役時代に汗を流したグラウンドで今は指揮をとる。 大石監督は高校3年夏に主将を務めて甲子園出場。大学卒業後は三ヶ日の監督を経て、前任の静岡では部長、副部長として4年間で5度の甲子園出場をサポートした。 2018年4月から母校の監督を務め、今年で5年目を迎える。昨年は沢山優介(現ヤマハ)、榊原遼太郎(現国学院大)の2枚看板を擁して春の東海大会制覇。夏は県ベスト4に進出した。「去年の夏、あと一歩のところで悔しい思いをして、そこからスタートして、秋にまたあの負けで叩きのめされて…」 指揮官が口にする「あの負け」とは昨年秋の県大会準々決勝のことだ。日大三島と対戦し、シーソーゲームの末に、サヨナラ負けを喫した。その後、勢いに乗った日大三島は東海大会で優勝。主将の河原﨑琉衣(3年=捕手)が振り返る。「日大三島が東海大会でも勝って、そこでもっと悔しさが増していって、自分たちを成長させてくれたと思います。それがあって冬はチーム全体できついトレーニングを乗り越えることができました」。
■公式戦の雰囲気に近づけて練習
レベルアップを実感した春。しかし、新型コロナウイルスの影響で辞退を余儀なくされた。 残されたチャンスは夏のみ。大石監督は「夏に全てをかけて、長い夏にするんだ」と選手に語り掛ける。日々の練習では1秒も無駄にしない。誰もが、グランド内をテキパキと行動。大石監督のノックでは一つのミスも許さない雰囲気を作り出している。河原﨑は言う。「自分たちは、練習で集中して、その練習を試合で出せるように取り組んでいます。春の大会は辞退になってしまいましたが、だからこそ、練習を大切にして、少しでも公式戦の雰囲気に近づけるようにしています」 その上で掛川西ナインは感謝を大切にしている。ベンチのホワイトボードには「いつも笑顔で向上心、感謝の気持ちを持ってプレーしよう」と書かれている。 この夏の目標は甲子園1勝だ。 昨年が投手型のチームだとしたら、今年は攻撃型のチームとなる。野手は前チームから主力が5人残り、実力も経験値も高い。大石監督も「ノーガードの試合は滅法強いんです」と話す。 カギを握る投手陣も成長。長身右腕の山本柊太(3年)は下半身が一回り大きくなって安定感が増し、左腕の岩澤孔大(3年)は球速が130キロ台まで上がってきている。 投打の歯車がかみあってきた伝統校。ノーシードから一気に頂点に駆け上がる。