【静岡市立】「ブレイクスルー」

 今必要なのは殻を破ること
目標の全国制覇へ向け公立名門の挑戦始まる

新チームはメンバー総入れ替えとなった静岡市立。笑顔で戦う新チームの課題を聞いた。(取材・栗山司)

■「いい子たち」からの脱却へ

地元では「市高(いちこう)」の愛称で親しまれる静岡市立。計3度の甲子園出場を誇る名門だ。  今年の夏は3回戦敗退も、春選抜大会出場校の常葉大菊川と中盤まで互角の試合を演じた。  印象的だったのは選手の楽しそうな表情。劣勢の場面でも常に笑顔を浮かべていた。3年前から、本格的にメンタルトレーニングを導入。本番で発揮する能力を高めてきた。  そんな前チームはレギュラーが全て3年生だったため、新チームではメンバーが総入れ替えとなった。秋の県予選では城南静岡と常葉大橘に連敗して、県大会出場を逃した。水口啓太主将(2年=捕手)が振り返る。「練習では楽しくプレーできていましたが、緊迫した大会になったら自分たちの持っている力を出せなくなってしまいました。技術的にもメンタル的にも個の力が足りませんでした」。安井信太郎監督は「ポテンシャルの高い選手はいる。中学時代に主将や副主将を経験している選手も多い。でも、いい子たちすぎるんです」と、殻を破りきれないチームの現状を説明する。

■課題練習で主体性を養う

この秋から毎週火曜日は課題練習を行っている。安井監督からの提案だった。「一番は自分たちで考える力をつけてほしい。今は主体性と言われている時代。振り返りと課題を見つけることが大事だと思った」。  土曜日と日曜日の練習試合で出た反省点をもとに、選手たちが話し合って課題練習の内容を決める。取材日の火曜日は守備練習を行っていた。内野手は捕球とスローイング、外野手はマシンを作ってフライを捕っていた。  直前の練習試合では常葉大菊川、常葉大橘、加藤学園、早稲田実(東京)と対戦。甲子園経験のある実力校を相手に「取れるアウトが取れず、失点してしまった」と水口主将。ミスが目立った守備の反復練習をこなした。  安井監督は言う。「失敗してもいい。もっと色々なアイディアを出してほしい。課題練習を工夫して改善していくことでチーム全体がレベルアップしていくと思う」。

■来春は強豪撃破へ

チームの目標は全国制覇に置く。そのために、まずは春の東海大会優勝を狙っていく。投手陣はエースの小林夕真(2年)を中心に左右の複数を擁し、攻撃は機動力を使いながら得点を挙げていく。  安井監督の言葉に力がこもる。「可能性があっていい子たちだからこそ、何とか勝たせてあげたい」。メンタルトレーニング、そして新たに磨いている主体性を駆使し、強豪に立ち向かう。

 

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