もはや関東大会出場では満足できない
甲子園へ行くためには何が必要か?
関東大会の常連校になりつつある群馬の気鋭・明和県央。年末年始には指揮官が緊急入院する事態に見舞われたが、チームは“荒波”を乗り越えて進化している。
■3大会連続で関東大会出場
著しい進化をみせる上州の新興勢力だ。2022年秋県大会で準優勝を果たして初の関東大会出場を決めた。さらに2023年春にも準優勝し再び関東大会へ出場すると初戦で甲府工に競り勝ち関東初勝利を決めた。実績を伸ばすチームは同年秋にも関東大会へ駒を進めて、秋・春・秋の3大会連続(夏は関東大会なし)で関東へ進出していることになる。決勝ではいずれも健大高崎に敗れて「壁」を越えることはできていないが、大きな戦果となっている。昨秋関東を終えて2024シーズンへの準備を進めたチームだったが、2014年から指揮を執る塩原元気監督が緊急入院するというアクシデントが起きた。
■指揮官が緊急入院するアクシデント
11月中旬、明和県央は沖縄に修学旅行へ出掛けた。野球部員らを引率した塩原監督は出発前日から腹部に異変があったというが、そのまま沖縄へ到着。行程を終えて羽田から学校へ戻るバスの中で体調が悪化し学校到着直後に病院へ搬送された。診断は「大腸憩室(けいしつ)症」で、大腸に穴が空いていたという。すぐに手術を行い約2カ月の入院生活。あと数日遅れていれば命に関わる事態だった。その間は、コーチ陣がチームを指導し、生徒たちには自立心が芽生えたという。塩原監督は「2014年の監督就任から10年間、夢中になって野球部強化に励んできましたが、グラウンドでの指導が当たり前ではないこと、“今”が大事だということに気づきました」と話す。指揮官は1月中旬に現場復帰、選手と共に次なる一歩を踏み出した。
■夏の甲子園切符は1枚のみ
目指すは、初の甲子園だ。今季のチームは、勝負強さとキャプテンシーを備える高橋樹輝主将(3年=内野手)を軸に、1年秋からマウンドに立つ右腕エース小路颯人(3年=投手)が安定感あるピッチングをみせる。田中大翔(3年=内野手・投手)、安原秀哉(3年=内野手)、小路悠人(3年=外野手)が攻守の役割を果たす。今季のチームは、一体感と投打のバランスの良さが特長。守備からリズムを作って攻撃へつなげていく。関東大会は県準優勝で出場できるが、夏の甲子園切符は1枚のみ。「関東大会での経験を夏に活かしていきたい」(高橋主将)。塩原監督は「準優勝で満足していたら甲子園には行けない。頂点に立つという覚悟が求められている」と力を込める。若人たちは意気高く聖地を目指す。