春の悔しさを原動力に「1番」を追い求める夏
敗戦から始まった、頂点への逆襲

 春の敗戦が、チームに火をつけた。「あの悔しさを無駄にしない」と心に誓い、“本音でぶつかるチーム”へと変わった。一人ひとりが「1番」を目指し、仲間とともに頂点を目指す夏が始まる。(取材・栗山司)

■負けから得た財産

この夏はノーシードから頂点へ―。
 昨秋は県ベスト8入りを果たしたものの、春は大きな悔しさを味わった。藤枝東戦との初戦は幸先よく序盤に5点を先取した。しかし、プロ注目のエース左腕・秋山創大(3年)が6回に1点、7回には4点を失って逆転を許した。打線もその後は沈黙し5対6で敗退。県大会への道は、そこで閉ざされた。主将の磯谷怜皇(3年=捕手)が試合を振り返る。「5点を取って秋山が投げていたので、自分を含めてどこかに『もう大丈夫だろう』というスキがあったと思います」。
 敗退後、チームは数日をかけてミーティングを重ねた。「何がいけなかったのか。これからどうしていくべきか」を真剣に話し合った末にたどり着いた答えは「もっと本音で言い合える集団になろう」ということだった。「仲の良さが自分たちの長所。でも野球になると遠慮して厳しいことを言い合えていませんでした」と磯谷。春の敗戦は、チームの在り方を見つめ直す転機となった。「この春の負けがあったからこそ、『変われた』と思える夏にしたいんです」と力を込める。

■「1」にこだわるチーム

日々の練習は、高橋利和コーチのノックで幕を開ける。声を張り上げ、泥だらけになるまで白球を追い続ける姿は、見る者の心に強く残る。鍛え上げられた守備は、確実に失点を防ぐ力となっている。
 攻撃面はバットだけに頼らず走塁で揺さぶる。果敢な盗塁で流れを呼び込むのが、このチームのスタイルだ。
 掲げるチームテーマは「1」。チームとして県で1番を目指すのはもちろん、各選手が「自分にとっての1番」を追い求める。例えば遊撃手の山本雅人(3年)は「県ナンバーワンのショートになる」と日々努力を惜しまない。それがプレーの技術であれ、元気や雰囲気作りであれ「1番」の数を増やすことで、チームの総合力を高め、甲子園への可能性を広げていくと信じている。

■甲子園で勝つことを目標に

春に結果は残せなかったが、オフシーズンの取り組みでチームは着実に力を蓄えた。1月には三保に赴いて2泊3日の合宿を実施。砂浜での走り込みを中心に、心身を徹底的に鍛え上げた。片平恭介監督はその狙いをこう語る。「しんどい場面を全員で乗り越え、もっとコミュニケーションをとってほしかった」。例年以上の準備を重ね、あとは発揮するだけ。
 「甲子園に出場し、そこで勝つ」。春の悔しさをバネに、夏の頂点を目指す挑戦が始まる。

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