【国士舘 野球部】「威風堂々」

2年連続の選抜切符。

経験と自信を手に、リベンジ&上位進出を誓う

昨秋の東京都大会を制した国士舘が2年連続10度目の選抜出場を決めた。

「初出場のような気持ち」で初戦敗退となった昨年からのリベンジを誓うとともに、東京王者として堂々と上位進出を目指す。

(取材・三和直樹/撮影・花田裕次郎)

■ 「もう一度、甲子園で」

午後3時10分、昨年よりも3分早く校長室の電話が鳴った。

「喜んで受けさせていただきます」。

朗らかな笑みを浮かべた岩渕公一校長が、すぐさま校舎脇のグラウンドで待つ野球部員たちに“吉報”を知らせる。

「開幕を堂々と迎えられるようにしたい」と鎌田州真主将(2年=内野手)。

「甲子園、行くぞ!」。

部員たちは胸を張り、帽子を空高く放り投げた。

2年連続の選抜出場。

「昨年のチームが甲子園に出るという道筋、キッカケを作ってくれた。

それを下級生たちが見て、何をやったら甲子園に出られるのかという物差しができたんじゃないかと思う。

そして、『もう一度、甲子園で戦いたい!』という気持ちが今年のチームにはあった」と永田昌弘監督。

昨秋の都大会で、攻撃陣が予選2試合を含めた全8試合で計55得点(1試合平均6.9得点)を奪うと、新エース・中西健登(2年=投手)が試合を重ねる毎に成長し、城東との準決勝、そして帝京との決勝と2試合連続の完封劇。

文句なしの強さを見せた。

■ 初戦敗退の経験を活かす

リベンジの思いがある。

「同じ過ちは繰り返さないようにしたい」と永田監督。

10年ぶりの出場で「初出場のような気持ち」で臨んだ昨春の選抜大会は、初戦で明石商(兵庫)に1対7の完敗。

投打ともに硬さが見え、「グラウンドに入った時から圧倒されて、気づいたら試合が終わってしまっていた」と鎌田主将は振り返る。

しかし、その経験は必ず次に活きる。

「今年はもっと考えながらプレーできると思う」と鎌田主将。

また、明石商がベスト4まで勝ち上がったことで「あのレベルのチームに勝てれば…」という甲子園用の“物差し”を知っていることも大きく、故障明けで万全でなかった4番・黒澤孟朗(2年=外野手)も「強豪相手にも一つ一つ勝ち上がって優勝を狙いたい」と力強い。

鍵を握るのが、エースの中西だ。

直球、カットボールに「一番自信がある」シンカーが武器のスリークウォーター右腕。

「自分のピッチングに自信がついた」という秋から、冬は「体重増と下半身の筋力アップ」でさらに進化している。

抜群の野球センスを誇る3番・清水武蔵(1年=外野手)も楽しみな存在。

東京王者として上位に進出できる力は持っている。

■ 追い風に乗って

過去10度の選抜大会で、2度(91、93年)のベスト4進出の実績を持つ「春の国士」。

選抜発表の日が62歳の誕生日だった永田監督は「今年は東京五輪もあります。

東京に良い風が吹いてくれれば、その風に乗って勝っていきたいと思います」と笑みを浮かべる。

監督を含めてチーム全体に、2年連続の余裕と意気込み、ちょうど良い緊張感が漂っている。

昨年の秋季大会に優勝したことで「スポーツ刈り」を解禁した国士舘野球部。

「今、野球をやる子が少なくなっていて、高校に行ったら頭を坊主にするからやりたくないという話をよく耳にしますから」と永田監督。

令和初の選抜大会で、創立100年を超える伝統の国士舘が新時代到来の象徴となる。

その勇姿を、しっかりと見届けよう。

岩渕公一校長

「昨年は初戦敗退でしたが、今年は一つでも多く勝って、国士舘の野球の素晴らしさを全国に知らしめてほしいと思っています。

強いものに向かって行く姿勢、困難なものに立ち向かって行く姿勢を見せてもらいたい。

そして支えてくださった保護者、指導者、OB、いろいろな方々の恩に報いるように、頑張ってもらいたいと思います」

永田昌弘監督

「昨年に続いての甲子園。

去年流した悔し涙を、今年は流さないように、去年の経験を踏まえて臨んで行きたいと思います。

選手たちは、全員で甲子園の勝利を目指してもらいたい。

私は、選手たちが力を発揮できるように手助けできればと思っています」

鎌田州真主将(2年=内野手)

「どこのチームと当たっても挑戦者の気持ちで、とにかく全力で向かって行きたい。

冬の間に相手の隙を突く走塁を練習してきた。

そこを突き詰めれば、さらにチームはよくなると思う。

チームの全員が、今年こそ甲子園で勝ちたいと思っているし、みんな『自分がやってやる』と思っている。

全員で元気よくプレーできたらと思います」

中西健登(2年=投手)

「チームの勝利につながるピッチングをしたい。

(都大会の)準決勝、決勝で完封できたので、欲を言えば甲子園でも完封したいと思います。

最低でも2つは勝ちたいですし、その先の優勝というものを目指して頑張りたい」

黒澤孟朗(2年=外野手)

「これからもう一度気持ちを引き締めて、しっかりと準備して行きたい。

秋はあまりチームに貢献できなかったので、甲子園ではチームの勝利に貢献できるバッティングをしたい。

体が小さくても長打を打てるというのが自分の持ち味。

甲子園で1本打ちたい」


国士舘高等学校

【学校紹介】
住 所:東京都世田谷区若林4-32-1
創 立:1917年
甲子園:11回(春10回=今選抜含む、夏1回)
創立100年を超える中高一貫の私立男女共学高。

大学も設置。

国家のリーダーとなる「国士」の養成を目的に、スポーツ育成にも力を入れ、柔道の齊藤仁、鈴木桂治ら多くの五輪出場者を輩出。

野球部は東京都多摩市の多摩キャンパス内の野球場で練習。

主なOBに浜名千広、久古健太郎などがいる。

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