2度目の聖地を目指す「ありんこ軍団」
プロ注目のエース左腕とともに進化する
全員の力を集結させて強敵に立ち向かって来た「ありんこ軍団」八王子。今季は絶対的エースを軸にした大型チーム。士気上がるチームは、今までにない姿で「夏」に向かう。(取材・三和直樹)
(2021年3月号掲載)
■確かな手応えと足りないもの
2月初旬、春の訪れを感じるグラウンドに、ようやく本来の熱気が戻ってきた。
2度目の緊急事態宣言による練習禁止、自主トレーニングの期間を経て、約1カ月ぶりの全体練習。部員たちの晴れやかな表情を見届けた安藤徳明監督は、普段通りの穏やかな口調でありながら、その言葉に力を込めた。「夏はもう、優勝することしか考えてないですね。やらなければいけないことはたくさんありますけど、体が大きくて魅力のある子たちが集まった代なので楽しみは大きい。西東京で1番になるためにはどうすればいいかということを常に考えてやっていきたい」。
身長190センチを超えるプロ注目の大型左腕・羽田慎之介(2年)を筆頭に、高身長で体格に恵まれた選手たちが揃い、安藤監督が「今までにない感覚がある」と語る期待のチーム。昨秋の都大会は、1回戦・富士森の勝利後、2回戦では前年王者・国士舘を相手に2対1の逆転サヨナラの劇的勝利を収め、続く3回戦では日大鶴ヶ丘を3対1で撃破。勝ち上がる度に大きな可能性を感じさせた。
だが、結果はベスト8止まり。快投を続けた羽田には大きな手応えを得たが、打線に関しては課題が残った。コロナ禍による休校の影響で2学期が通常よりも早く開始され、新チーム発足後の夏休みは、わずか1週間ほど。例年に比べて実戦経験が不足した。リードオフマンの安藤健(2年=内野手)、ショートを守る新田優樹主将(2年=内野手)の1、2番の出塁率は高かったが、打線の繋がりを欠いて“ありんこ軍団”たる所以は見せられず。エースの羽田を故障で欠いた準々決勝は、関東一に0対7のコールド負けと脆さを見せた。
■確かな成長と次なる目標
課題は多くあるが、明白でもある。攻撃の形と2番手以降の投手を確立させて、エース・羽田への負担を減らすこと。
安藤監督は「今年のチームはパワーがあり、選択肢が多い。いろんな可能性を持っている」と語る。冬の間は自主トレ期間が続いたが、選手各自が自覚を持って練習に取り組み、大きくパワーアップ。池添法生前監督から続く『一匹一匹の力は小さくとも大群となって戦えば巨象をも倒す』という“ありんこ軍団”の精神は現チームにも根付いているが、その上で一人一人の力が大きくなれば、さらに結集した時の力は強くなり、西東京の巨象たちを連続で倒すことも容易になる。
「コロナの影響で練習量は減ったけれど、その分、自分自身の時間や野球そのものを学ぶ時間が増えた。それが、この子たちの自立に繋がってくれたらいい」と安藤監督。その思いを聞かずとも、新田主将は「甲子園に出るだけじゃなくて、甲子園で勝つことがこの代の目標です」とキッパリ。
選手たちはすでに力強く前を向いている。旋風を再び。進化した“ありんこ軍団”が、5年ぶり2度目の聖地行き切符を真っ向から奪いにいく。