今秋ベスト16進出。
チームは再び走り出す
秋季県大会でベスト16入りを果たした橘学苑。
選手たちは、自らが選んだ道が正しかったことを証明するため戦い続ける。
(取材・伊藤寿学)
■ 戦国神奈川で確かな実績
橘学苑は2019年4月から前任監督が指揮を執っていたが、2019年夏大会後の新チーム始動から、福冨洋祐顧問、吉江悠介顧問、石黒滉二顧問の三人体制で指導にあたっている。
石黒顧問は2006年の野球部創部時からチーム作りに携わり2010年春には初の県ベスト4進出、2014、2017年夏ベスト8進出を果たすなど戦国神奈川で確かな実績を残してきた。
学校事情によって約4ヵ月間、チームから離れていたが、選手たちの強い要望によって現場復帰。
チームの“時計”は再び動き出している。
■ 限られた環境で創意工夫
授業が終わると、選手たちは学校裏手のグラウンドへ続く坂道を駆け足で降りてくる。
その表情からは、野球ができる喜びが伝わってくる。
練習場は、内野スペースが確保できるだけの「三角グラウンド」。
選手たちは、創意工夫しながら狭いスペースを有効活用、環境は限られているが強豪校に負けない質の高い練習を積んでいる。
選手たちは、野球だけではなく人間的な成長を求めて橘学苑野球部を選んだ。
野球部は、選手たちのもの。
そのために何をすべきか。
選手たちは、自らで考え、自らの道を選んだ。
■ 負けられない戦い
秋大会は、負けるわけにはいかなかった。
地区予選初戦の日大戦では1対9のコールド負け。
あとがなくなったチームは旭、横浜栄の2戦で勝利し2勝1敗で予選突破、県大会へ臨んだ。
試練は2回戦だった。
2回戦の相手は、予選で大敗した日大。
予選初戦から約3週間、選手は自分たちの力のすべてを発揮すべく戦いへ臨んだ。
選手、指導者、保護者らが一丸となって戦ったゲームで、橘学苑は10対5で勝利してみせた。
増元旭主将(2年=捕手)は「新チームになってから選手たちで何度もミーティングを重ねて、全員の思いは一つだった。
橘学苑の伝統をつないでいくためにも僕たちが結果を残さなければいけないと思っている」と視線を上げる。
攻守の要・ゲームキャプテン・上田甲(2年=内野手)は「試合前の雰囲気で、勝てる気がしていた。
自分たちの力をみせることができて良かった」と激闘を振り返る。
勢いに乗ったチームは3回戦で横浜創学館も撃破、ベスト16へ駒を進めて秋を終えた。
新チームは増元主将、ゲームキャプテン上田、大橋駿也副将(2年=外野手)が中心となり、チームをまとめる。
そしてダブルエースの龍崎裕哉(2年)、國分陸人(2年)、永田一希外野リーダー(2年=外野手)、主砲・遠藤宝真(2年=内野手)が脇を固める。
永田は「僕たちは学校と野球部の看板を背負って戦っている」と、母校愛を示す。
今夏を経験した選手が多く残るチームは、神奈川の頂点を狙う力を秘めている。
この秋、大きな成長を遂げたチームは信じた道を突き進む。
グラウンドには、正義がある。
福冨洋祐顧問
1981年生まれ。
桐蔭学園-東洋大。
星槎国際湘南などで指導したのち橘学苑部長。
吉江悠介顧問
1980年生まれ。
2018年度より橘学苑顧問。
石黒滉二顧問
1972年生まれ。
2007年から橘学苑監督。
2010年初ベスト4へ導くなど実績を挙げている。
橘学苑高等学校
【学校紹介】
住 所:神奈川県横浜市鶴見区獅子ヶ谷1-10-35
創 立:1942年
甲子園:なし
橘女学校として開校。
2004年、現在の校名に改称し男女共学制導入、2006年全面共学化し野球部も創部。
2010年初ベスト4進出、2014、2017年夏ベスト8。