『ガッツ 気合 根性』が指導の原点

小倉全由前監督の勇退に伴い、2023年4月に日大三指揮官に就任した三木有造監督。小倉全由前監督のもと26年間参謀を務めチームの“たすき”を受けた指揮官は、昨夏の西東京大会で優勝。初陣で甲子園出場を成し遂げた。就任1年を迎えた三木監督に聞いた。

◾️愚直に繰り返していくだけ

―監督就任から1年が経過しました。
「あっという間でしたね。去年の4月に監督になってすぐに大会だったので考える時間もなかったです。気づいたら1年が経っていました」
―監督を引き継いだことについての印象は?
「小倉(監督)とは長い間、一緒にやらせてもらったので引き継ぐという意識はなかった。自然な流れでこのような形になったので、監督になったから、何かを変えようというのはありませんでした」
―新たな取り組みはありますか?
「特にありませんが、しいて言えば、小倉がやってきたことが、少しずつできるようになってきた感触はあります。小倉は、一方的に伝えるのではなく対話を重視していました。変わったことがあるとすれば、私の言葉遣いがやさしくなったことでしょうか。上品になりましたね(笑)」
―三木監督は日大三出身で母校を率いることになります。
「三高は小倉の母校でもあり、私の母校でもあります。ふたりでやっているときから母校を率いているつもりだったので、今までと変わりません。重みはありますが、今までやってきたことを愚直に繰り返していくだけだと思っています」
―監督と部長業は違いますか?
「監督は決断が求められています。部長のときは、監督が決断するためのサポートをしていましたが、今は私自身が決断しなければなりません。1年間を振り返ると反省ばかりです。特に負けた試合のあとは、もっと学ばなければいけないと感じています。小倉がやってきたことを継承しているつもりなので、『(小倉前監督だったら)どうしていたか』を考える機会が多くなっています」

◾️チームの力をいかに発揮させるか

―決断の重みを感じますか?
「自分が判断を誤れば、チームが負けてしまいます。選手が頑張ってくれているので、勝たせるのが監督の役割だと考えています。選手、チームの力をいかに発揮させるかが監督の力。そのためには寮生活を含めて、しっかりと選手の気質を把握していかなければいけないと考えています」
―昨夏の西東京大会で優勝して甲子園出場を果たしました。
「今春卒業した3年生は、小倉の指導を受けるために入部してきた選手たち。小倉がチームを離れることになって不安もあったと思います。だから、選手を甲子園へ連れていきたかったのですが、逆に選手たちに(甲子園へ)連れていってもらったと思っています」
―監督になってから印象に残っていることは?
「去年の4月1日に、生徒たちが私のことを『監督さん』と呼んできたのです。勇退する小倉が生徒たちに『これからはオレではなく三木が監督になるのだから、三木監督と呼ぶように』と伝えてくれたそうです。私はびっくりしてしまって『三木さん』のままにしてくれ、と話しました。『監督』になってしまっていたら、(西東京大会は)違う結果になっていたかもしれません。新チームになっても『三木さん』のままです」

◾️「永遠の兄貴」でありたい

―小倉前監督は「生徒は孫のようだ」と話していました。三木監督から見て生徒たちはどんな存在でしょうか?
「父親のような年齢ですが、自分としては『永遠の兄貴』でありたいと思っています。弟に接するような気持ちで指導をしているつもりです」
―初陣で夏甲子園出場を成し遂げました。
「一昨年までは選手たちに『小倉監督を甲子園へ連れていけ』と言っていたのですが、選手たちが自分を甲子園へ連れていってくれました。夢のような感覚でした。ただ、特別なことをやったわけではなく、小倉がやってきたことを一つひとつ積み上げていっただけ。その先に甲子園がありました」
―昨秋の都大会では2回戦で二松学舎大附に敗れました。
「8対15のコールド負けだったのですが、チームにとっても私にとっても屈辱的な結果でした。ただ、結果は変えることはできないので、この結果を受け止めて、未来を変えていくしかないと考えています」
―小倉前監督は『練習は嘘をつかない』が座右の銘でした。三木監督が大事にしている言葉はありますか?
「『ガッツ 気合 根性』です。今の時代に合っているかどうかは分かりませんが、勝負事は、理屈ではない部分があります。困難にぶつかったときに、まずはなんとかしてやろう、という気持ちが無ければ、立ち向かうことはできません。『ガッツ 気合 根性』の土台の上に、理屈や技術があると考えています。『ガッツ 気合 根性』は私自身に言い聞かせている言葉でもあります。生徒たちには難局に負けない人間になってほしいと思っています」

三木 有造(みき ゆうぞう)
1974年和歌山県生まれ。日大三―東洋大。大学卒業後に教師を目指して科目履修生として大学に残った傍ら、学生コーチとして小倉全由前監督に師事。コーチ、部長として26年間支えて2023年4月から監督。同年夏西東京大会優勝で甲子園出場。

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