2021、2023年に夏4回戦進出の都立伝統校
「ノーサイン野球」を追求して夏ベスト8へ

世田谷区用賀に位置する桜町は、1938年創立の伝統都立校。野球部は2021、2023年に夏4回戦に進出するなど力を伸ばす。スローガンは「必笑」。選手たちはスポーツを楽しみながら本気で夏ベスト8を狙っていく。(取材・松井裕一)

■自分たちで考える野球

努力の成果が勝利につながっている。2021、2023年には粘り強い戦いをみせて夏4回戦に進出した。前チームは春予選で都立実力校・豊多摩に勝利して都大会に出場。豊多摩戦は2~6回限定で、選手たちが作戦を立てる「ノーサイン野球」を実践し7対6の逆転勝利を収めた。今夏は2回戦で帝京八王子に勝利。3回戦では日大三に屈したものの、強豪相手に悔いのない戦いを実践してみせた。チームは随所に「ノーサイン野球」を組み込んで、選手たちの意思を体現。藤森立紀主将(2年=内野手)は「自分たちで考えながら野球ができるように日々の練習から全員で取り組んでいます」と力を込める。

■名門出身指導者が生徒に寄り添う

 チームを率いるのは、埼玉強豪・聖望学園出身の浅原圭監督。中学時代は清瀬ポニーで日本代表となり、世界選手権準優勝を経験した実績を持つ。松川友則部長は都立大でプレーし、青年海外協力隊を経て教員となった異色のキャリアを持つ。経験豊富な指導者が二人三脚で指導している。今のチームに浸透させているのは「ノーサイン野球」。生徒たちのアイデアは、ときに指導者たちの想像を超えていくことがあるという。浅原監督は「生徒たちがグラウンド上で感じた感覚や情報を判断材料にして積極的にプレーしてほしい。強豪私学に勝つためには、生徒たちのアイデアが必要だと考えています」と語る。日々の練習から一つひとつのプレーを考えることが、ノーサイン野球の精度を高めていくという。

■チームの目標は「夏ベスト8」

学校生活も練習の一つ。この秋の生徒会役員選挙に、複数の野球部員が立候補をした。藤森主将は「今は未熟ですが、学校生活でも模範となれるように活動しています」と話す。浅原監督は「学校生活はもちろん、あいさつや返事、社会でのマナーを身に付けた上で野球がある。過去の経験から人間性が優れた選手が最後に結果をつかんでいると思う」と説く。新チームは、藤森主将を軸に士気が高まる。最速120キロのスリークォーターエース脇田龍志(2年)、俊足巧打の荻野虎羽(2年=外野手)、高打率を誇る強打者・笠間奨介(2年=捕手)らが屋台骨となりレベルアップを目指す。秋予選は都立実力校・府中工科に5対6で惜敗したが、選手たちは春、夏を見据えて努力を続ける。チームの目標は「夏ベスト8」。桜町はノーサイン野球に磨きをかけながら、心技体で進化を遂げていく。

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