文武両道を貫く都立の雄。
昨秋初戦敗退の悔しさを力に変えて
文武両道を貫きながら虎視眈々と上位進出を狙う都立の雄・文京。
昨夏の主力が多く残る現チームは、昨秋の敗戦を糧に春・夏の飛躍を誓う。
(取材・伊藤寿学 2020年3月号掲載)
■ 夏の主力が残った現チーム
現チームには大きな期待が寄せられていた。
昨夏は3回戦で敗れたが、試合経験のある主力2年生がそのままチームに残り、新チームの屋台骨を形成。
士気上がるチームは一昨年秋のベスト16を越える「ベスト8以上」そして「選抜出場」を狙って始動した。
チームは、古坊充輝主将(2年=投手)、高野優太(2年=捕手)のバッテリー、陶山泰誠(2年=内野手)、徳山類(2年=内野手)の二遊間、さらにセンター古田太陽(2年)のセンターラインが確立され、上位進出を狙う野心があった。
しかし、現実は計算どおりには進まなかった。
■ 昨秋都大会は初戦敗退
個人の力は高かったもののチームとしての歯車が噛み合わなかった。
チームコンディションが上がらない中で予選1回戦はなんとか勝ち抜けたものの、予選決勝では明法に苦しいゲームを強いられて、延長戦でかろうじて勝利した。
どうしても打線がつながらない。
不安の中で迎えた都大会1回戦でも打線が空回りし、早大学院に2対9のコールド負け。
消化不良の結果に終わってしまった。
梨本浩司監督は「経験値は高かったが、チームのつながりが生まれずに、メンタル的な弱さが出てしまった」と振り返る。
■ 「根性」を注入したチーム
こんなはずではない。
自分たちの弱さと向き合った選手たちは、冬に過酷なインターバル走を導入するなど心技体の強化に力を入れた。
スマートな戦いだけでは勝てない。
冬トレーニングで「根性」を思い切り注入したチームは、グラウンドだけではなく学校生活から見直し、「文武両道」の原点に立ち戻った。
古坊主将は「チーム全体の意識が上がり、底上げができてきている」と話す。
学年の枠を越えて、切磋琢磨するチームは、春を前に選手たちが一斉に力を伸ばし始めている。
2月上旬の紅白戦では、控え組が鋭い打球を次々と放ち、指揮官を喜ばせた。
■ 都立で勝ち上がる喜び
2015年から母校・文京を率いる梨本監督は、2001年に城東を夏甲子園へ導いた辣腕。
自身2度目の甲子園を目指し選手たちを指導しているが、夏3回戦を突破することができていない。
東東京では同じ都立の小山台が2年連続で決勝に進出するなど都立の勢力図が変わりつつある中で、文京も意地をみせたいところ。
梨本監督は「私自身も悔しい思いをしている。
全国的に私学すう勢の状況で、都立で勝ち上がる喜びを選手たちに伝えたい。
今年の夏の準決勝・決勝は東京ドーム開催なので、選手たちには『東京ドームに行くぞ』と伝えている」と選手を鼓舞する。
文京自体は豊島区にあるが、東京ドームまでは直線距離で約5キロ。
球春に向けてにわかに活気付く文京は、東京ドームで“勝どき”を上げるべく邁進する。
東京都立文京高等学校
【学校紹介】
住 所:東京都豊島区西巣鴨1-1-5
創 立:1940年
甲子園:なし
校訓は「至誠一貫」。
野球部は創立と同時に創部、文武両道を追求。
部活は野球のほか陸上などが強豪。
吹奏楽の活動も盛んで、夏のスタンドでは迫力の演奏を響かせる。