「2020年夏 大会レポート 実践学園」涙なき敗戦  #実践学園

「3年生の活躍は、後輩たちの道標になった」 沢里優監督
「最高のチーム。全員が笑顔で終わることができた」渡邊耀元主将

2020夏季東東京都大会 準々決勝 8月4日

実践学園 0 0 0 0 0 0 0  0
東亜学園 2 3 1 1 0 0 ×  7
※7回コールド

24年ぶり夏ベスト8。東京で一番、楽しんで野球をしよう!

実践学園が準々決勝で東亜学園に敗れた。

選手たちの心は、負けた悔しさよりも、戦い抜いた達成感で満たされていた。

2020年9月号掲載
(取材・三和直樹/撮影・花田裕次郎)

■ 7回コールド敗戦も笑顔の終戦

汗と泥にまみれたユニフォーム。

そこに涙はなかった。

0対7の完敗も、彼らの胸に迫ったのは悔しさよりも達成感だった。

実践学園は、初戦で大東大一を下して勢いに乗ると、2回戦では都立実力校・高島を2対0で撃破、3回戦は新鋭・日大目黒、4回戦は足立西を倒して、準々決勝まで勝ち上がってきた。

「今日(準々決勝)の試合はご褒美でした。こういう大会がなかったかも知れない中で、最後まで戦うことができて、よくここまで勝ち上がることができた。今日は『東京で一番、楽しんで野球をしよう』と言って選手たちを送り出しました」と実践学園の沢里優監督。

その試合は終始、東亜学園ペースで進み、初回に2点を奪われると、2回にも3点、3回には本塁打を浴びて4回まで毎回失点。

打線も、左腕・鈴木隆之介の前に2回、4回と得点圏に走者を進めながら無得点。

6回には1死2、3塁から主将の2番・渡邊耀元がレフトフライを打ち上げたが、「犠牲フライになるかなと思ったけど、あと少し、飛距離が足りなかった。自分の実力不足です」と惜しくも本塁タッチアウト。

7回コールドで力尽きた。

■ 3年生全員がベンチ入り

それでも「3年生全員がベンチ入りするという目標を達成できた」と渡邊主将。

「初戦から全員野球でここまで来た。泣いている選手は1人もいなかったですし、全員が笑顔で終わることができた」と表情は晴れやかだった。

ここ数年、沢里監督の下で選手個々の主体性に重きを置いたチーム作りを進めてきた。

今年の自粛期間中は、YouTubeでトレーニングメニューの動画を配信。

各自が自覚を持って個人練習に励んだ。

その中で主将の渡邊は、今年の年明けに小学生時代から抱えていた腰椎分離症を再発させて「素振りをするのも痛い」という状態だったが、こまめに仲間と連絡を取り合って全員の気持ちを繋ぎ止めた。

「みんなキャラが濃くて大変だったんですけど、いざ野球となると一つになることができた」と渡邊。

“全員ベンチ入り”の目標を達成したこの日も、自身は痛み止めを打って出場し、仲間たちとの最後の高校野球を思う存分、楽しんだ。

沢里監督は「実践学園としては夏ベスト8に入ったのは24年ぶり。選手たちが本当に頑張ったという証だと思います。下級生たちは、これをベースにして『さらに上を目指すぞ』という気持ちになってくれると思う。いい道標を作ってくれました。

そして3年生たちには、『人生これからだぞ!』と言いたい」と話し、球場をあとにした。

引退する3年生の約半数が、大学でも野球を続けたいとの希望を持っている。

俺たちは野球が好きだ。今夏、改めて感じたことだった。

実践学園高等学校

【住所】東京都中野区中央2-34-2
【創立】1927年
【甲子園】なし
中高一貫の私立校。八王子高尾に研修センターとグラウンドを持ち部活動にも力を入れる。
野球部は2005年春に都準優勝し、関東大会出場。女子バスケ部は全国大会常連。

【2020年戦績】
1回戦 11-4 大東大一
2回戦 2-0 高島
3回戦 8-1 目黒日大
4回戦 2-0 足立西
準々決 0-7 東亜学園

【過去の戦績】
2019年3回戦 0-3 帝京
2018年5回戦 2-7 修徳
2017年5回戦 0-13 上野学園

1 紺野 広流
2 永田 智大
3 大島京之介
4 足立 晴彦
5 久保謙一朗
6 加川 裕貴
7 青木 裕大
8 井部 大輔
9 渡邊 耀元
10 米田 光騎
11 内山 寛斗
12 奥山 大樹
13 箱崎  慶
14 清田 温陽
15 下城 瑠偉
16 森川 功輝
17 冨田 翔真
18 米窪  陸
19 名和 隼希
20 田中 優太

おすすめの記事