1970年代に2度の夏甲子園出場。
新指揮官のもと「チーム再建」
1974、1979年に2度の夏甲子園出場した古豪・城西大城西。
再建をかけるチームは、昨秋の台風で荒川河川敷のグラウンドが水没する被害に見舞われた。
選手たちは困難を乗り越えて、春・夏へ向かう。
2020年3月号掲載
■ 台風で練習場浸水
信じられない光景だった。
昨年10月12日に関東へ上陸した大型台風の被害によって荒川河川敷グラウンドが完全に浸水した。
翌日、スタッフや選手たちが片付けのためグラウンドへ駆けつけると、練習場は濁流で覆われていた。
ネットや道具などは台風前に“退避”させたため最悪の事態こそ逃れたが、練習場は水没、汚泥が押し寄せて壊滅となった。
水が引いた数週間後、グラウンドは見る影もなく、荒地になっていた。
選手たちは「いつも使っていたグラウンドが、あんなふうになるとは思わなかった」と振り返る。
現在、グラウンドは工事中で今春、復旧予定という。
チームは、地域のグラウンドなどを借りて、この冬を過ごした。
■ 埼玉公立知将のチャレンジ
城西大城西は2019年4月から山崎警監督が采配を執る。
山崎監督は2007年春に埼玉県立富士見を県準優勝へ導くなどの実績を持つ知将。
無名校を強化し私学強豪相手に真っ向勝負した手腕が買われたようだ。
54歳の指揮官は埼玉県教員を退職し、覚悟を持って城西大城西へやってきた。
山崎監督は「就任前の2年間は監督業から離れていたので、もう一度、高校野球の指導がしたいと思っていた。
そんなときに、(学校側から)お話をいただいて受けさせてもらった」と経緯を明かす。
再建請負人。
山崎監督は、緩んでいたチームのムードを引き締め、改革に乗り出した。
■ 昨夏はベスト16進出
山崎監督の“初陣”となった昨夏は、進化の一端を示した。
2回戦で立教池袋、3回戦で学習院を下すと、4回戦では東京実業を逆転で撃破してベスト16入り。
5回戦では優勝校・関東一に敗れたが、東京のトップレベルを知ったのは収穫だった。
しかし、新チーム始動では現実を突きつけられた。
昨秋の1次予選初戦で芝に0対2で敗戦、早々に秋大会が終わってしまった。
エース・三沢大華(2年)は「投球のリズムがつかめずに2失点して、そのまま負けてしまった」と悔やむ。
チームは、投打の課題を胸に、春・夏への雪辱を誓った。
■ 荒川土手で基礎トレ
浸水被害によってグラウンドが使えない間は、フィジカルトレーニングを徹底した。
荒川土手で基礎トレーニングを実施し、みんなで走り込んだ。
投手陣は、全体的に球速が上がり、打撃陣はスイングに勢いが増した。
山崎監督は「グラウンドが使えなかった分、良いトレーニングができた」と前向きに捉える。
春到来を前に、チームは実戦練習を増やしている。
指揮官が求めるのは「考えて行動すること」。
選手たちは1プレー1プレーの意味を考えながら練習に励む。
浜比嘉千二主将(2年=捕手)は「秋に練習場が浸水した中で、いつ練習ができるのかと思ったが、多くの方々の協力によって活動することができた。
結果を出すことによって、感謝を伝えたい」と話す。
選手たちは困難を克服して強くなった。
この先に、古豪復活がある。
城西大学附属城西高等学校
【学校紹介】
住 所:東京都豊島区千早1-10-26
創 立:1918年
甲子園:夏2回
野球部は1974、1979年に夏甲子園出場。
主な野球部OBは、高橋慶彦(元広島など)、後藤茂基(中央大新3年)。
陸上短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム。