【栃木工 野球部】「球児の誇り」

2019年秋の台風で学校浸水。

グラウンド復旧直後にコロナ禍

昨秋大会後の豪雨により校舎や校庭が浸水した栃木工。

選手たちは、地域、学校、保護者の力を借りてグラウンドを復旧させたが、本格的に練習を始めた矢先に新型コロナウイルス禍によって活動が止まった。

選手たちは、仲間たちと共に夏の代替大会へ臨む。

2020年7月号掲載

■ グラウンドは泥と瓦礫

どのように表現すればいいのだろうか。

選手たちの心境を思えば心が痛む。

今年のチームは潜在能力の高いチームだった。

昨秋大会は1回戦で今市工を下して2回戦へ進出。

宇都宮商に惜敗したが、内容は決して悪くなかった。

日向野久男監督は「個人の力はあったが経験値が足りずチームとして仕上がらなかった」と振り返る。

その秋大会後、自然災害がチームを襲った。

昨年10月12日の台風19号の大雨によって学校近くを流れる永野川が氾濫。

校舎1階まで浸水し、グラウンドは最大2メートルの濁流が流れ込んだ。

翌日には水は引いたがグラウンドは泥と瓦礫で埋まり、使用できない状況となった。

テニスコートはいまだに復旧できていない。

■ 1年生大会でベスト4進出

そんな状況でも選手たちは、野球への情熱を失わなかった。

グラウンドがない状況で、近隣校などの支援を得て練習を積むと、1年生大会ブロック予選初戦で佐野日大を撃破して本大会出場を決めると2回戦で大田原に勝利しベスト4へ進出した。

その一方で保護者、OBらがグラウンド復旧に尽力した。

重機を使って泥を寄せると、内野に土を入れて準備を整えた。

右肩上がりでオフシーズンを迎えた選手たちは、外野に散らばる石を拾うなどグラウンド整備を行いながら、筋力トレーニングを積んだ。

2020年2月8日は、3年生対1・2年生の引退試合を実施し、3年生を送り出した。

外野グラウンドはまだ万全ではないが内野はノックができる状態に戻った。

士気上がるチームは1・2年生の力を融合し、春、夏へ備えた。

■ プライドをかけて夏代替大会へ

栃木工は、関口颯汰主将(3年=内野手)を軸に投打の戦力が揃いつつあった。

投手陣は、県選抜選出のエース山本和生(3年)、千葉大樹(3年)が安定。

捕手の堀口大貴(3年)も力を伸ばした。

さらに1年生の4番・五月女遥翔も楽しみな存在となっていた。

だが、コロナ禍によって選抜、春大会が中止となった。

4月の緊急事態宣言以降は、学校、部活ともに休止となり、活動は止まった。

日向野監督は、選手とコミュニケーションを取りながら自宅練習を促し、夏の希望にかけた。

しかし、5月20日に夏甲子園、夏大会の開催中止が決定。

指揮官は、選手たちと共に日本学生野球憲章を読み、高校野球の意味を問いかけたという。

そして「栃木工、高校球児の誇りを持て」と伝えたという。

甲子園は消えたが、球児であることに変わりはない。

栃木工の選手たちは、プライドをかけて夏代替大会に挑む。

栃木工業高等学校

【学校紹介】
住 所:栃木県栃木市岩出町129
創 立:1962年
甲子園:なし
「トチコー」の愛称で知られる工業高校。校訓は「和顔愛語」(わがんあいご)で、相手の心を察して笑顔で接するという意味。学校OBにお笑いコンビ「ザ・たっち」のたくや。野球部OBに、元巨人の寺内崇幸(現栃木ゴールデンブレーブス監督)。

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