【日野 野球部】「甲子園は、僕たちのグラウンドにある」

都立の星、いざ東京の頂点へ。

「人間力、感謝、前向き」を胸に戦う「特別な夏」

2013年西東京大会で準優勝を果たした都立の星・日野。

選手たちは、グラウンドの中にある甲子園を目指す。

2020年8月号掲載

■ 先輩から届いた手紙

夏甲子園大会の中止が決まったあとの6月上旬、2年前に卒業した先輩たちから野球部に手紙が届いた。

後輩たちを勇気づけたいという思いから、菅家春(東京国際大2年)、普入渉吾らが中心となり、マネージャーを含めた全18人が後輩へのメッセージをしたためて、学校へ郵送したという。

その郵便物は、嶋田雅之監督を通じて球児たちに渡った。

18通の手紙には、「日野の部訓【人間力、感謝、前向き】」を忘れないでほしい」「高校野球は人生で一度だけ。この時間を大切にしてほしい」などの言葉が書かれていた。

菅家は「甲子園という夢はなくなってしまいましたが、夢に向かって努力したことは無駄にはならない。仲間とともに最後までやりきってほしい」と話す。

先輩からの手紙を受けた選手たちは、ミーティング時に全員で読み込んで、日野で野球をやることの意味を理解したという。

■ 特別な夏での完全燃焼

2020年も、本気で甲子園を狙えるチームだった。

エース関口勇気(3年)は昨夏を経験。

3回戦では6回からの登板で国士舘打線を抑え込み、シード撃破の原動力となった。

新チームで臨んだ昨秋大会は1回戦で明大中野に勝利したが、台風による連戦下、2回戦で日本ウェルネスに3対4で惜敗し大会を去った。

春の飛躍を目指したチームは、選手たちが切磋琢磨しながら冬トレに励み、スケールアップ。

投手陣は関口、小畑雄飛(3年)が軸。

打線は、田中栄希(3年=内野手)、谷越優(3年=外野手)、武内丈(3年=外野手)、樋口恵斗(2年)らがアクセントをつける。

山﨑颯人主将(3年=内野手)は「今年は、みんなで一生懸命に努力ができるチーム。

甲子園大会はなくなったが、部活も学校生活も最後までしっかり取り組むことで、グラウンドの中にある“甲子園”を目指したい」と、特別な夏での完全燃焼を誓う。

■ 6月29日に初の全体練習


チームは6月下旬からグループ別練習がスタート、6月29日に初めて3学年の選手たちがグラウンドに揃った。

野球に飢えた選手たちは、嶋田監督、加藤洋章コーチのノックを浴びて、球児の魂を呼び覚ました。

そして同日夕刻、指揮官は代替大会の登録メンバーを発表した。

7月1日が登録期限のため、やむを得ない決断だった。

とはいえ今大会は、試合ごとの登録変更が認められているため登録外の3年生にも出場チャンスは残る。

嶋田監督は「今年の夏は特別な大会。全体練習開始日に登録発表をしなければいけない辛さがある。ただし、登録外の3年生もこれで終わりではなく、試合ごとに入れ替えができる。背番号を付けるための競争は続くので、1試合でも多くの試合ができるように大会へ向かおう」と選手に伝えた。

都立の星・日野の目標は「私学を倒して甲子園」。

甲子園という目標は幻となったが、選手たちは東京の頂点を目指して、白球を追う。

日野高等学校

【学校紹介】
住 所:東京都日野市石田1-190-1
創 立:1966年
甲子園:なし
野球部は2013年に西東京準優勝するなど、その実績から野球部は「都立の星」と呼ばれる。OBにミュージシャン忌野清志郎、俳優三浦友和、プロ野球佐々木千隼(ロッテ)など。

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