小池主将、エース橋本を軸に公立唯一の四強進出
コロナ禍でも選手たちは1試合ごとに成長みせた
昨夏準優勝の前橋商が、公立唯一の四強進出を果たした。
準決勝では、桐生第一に敗れたが、一丸となった戦いで公立伝統校の意地をみせた。
2020年9月号掲載
2020年群馬県高校野球大会準決勝 (8月8日=桐生球場)
前橋商 0 0 1 0 0 1 0 0 0 2
桐生第一 1 2 1 1 0 1 0 0 × 6
■ 一戦ごとに逞しくなった選手
昨夏は、エース井上温大(巨人)を擁して準優勝を果たした。
先輩たちの涙を糧とした今季のチームは、小池悠人主将(3年)を中心に夏の頂点を目指して始動した。
昨秋大会は準々決勝で健大高崎に3対10で敗れて、選抜の道が断たれた。
主戦として期待された橋本優雅(3年)がケガで出遅れ、2年生投手が奮闘したが私学に敗れた。
チームは攻守のスケールアップを目指しオフシーズンへ突入した。
今春、橋本はマウンドに戻ってきたが、コロナ禍によって学校が休校。
チーム練習が本格的に再開したのは6月下旬。
練習試合は7月中旬から。
チームは限られた練習環境の中、ぶっつけ本番で独自大会へ臨んだが、一戦ごとに逞しくなっていった。
■ 前商野球部のプライド
前橋商は初戦で前橋を11対0のコールドで下すと、2回戦は前橋工との伝統校対戦となった。
初回、石原生汰(3年)、星野凱空斗(3年)の連打で3点を先制すると、エース橋本が序盤苦しみながらも中盤以降に立ち直し、気迫の投球。
散発2安打奪三振9の投球で、5対2で勝利。
3回戦では明和県央に11対1でコルード勝ち、準々決勝では東農大二を橋本、茂田侑大(2年)の継投で完勝し、桐生第一との準決勝へ駒を進めた。
ゲームは序盤からスコアが動いていく。
前橋商は0対3で迎えた3回に、2塁打で出塁した舩津隼星(3年)を小池主将が適時打で返し1対3。
1対4となった5回には、1死満塁の好機を迎えたが、相手投手に抑えられてしまう。
6回に唐澤愛斗(3年)の犠飛で1点を返し、粘りをみせたが、決死の反撃も及ばず2対6で敗れた。
戦い抜いた選手たちは、敗戦をしっかりと受け止め、最後まで堂々と振る舞った。
■ 野球が大好きな選手たち
3年生は、コロナ禍の状況でも自主トレを重ね、再開後のわずかな時間で一気に成長を遂げた。
このベスト4には大きな価値がある。
住吉信篤監督は「例年に比べると3年生の人数は少なかったが、本当に野球が大好きな子たち。
1年生の頃から目に見えて成長してきた。
入学時は力のなかった選手たちが、2年半努力して、一生懸命練習してここまで来てくれた。
難しい状況の中で、最後までやり抜いてくれたことに感謝したい」と目を細めた。
群馬県は過去7大会、公立の夏甲子園出場がない。
私学台頭の情勢で、前橋商は昨年夏に準優勝、今夏は公立唯一のベスト4進出となった。
2010年夏以来の甲子園は、はっきりと視野に入っている。
前橋商の意地とプライドがチームを再び聖地へ導く。
この夏の戦いは、伝統を引き継ぐ後輩たちへの大きなチカラとなる。